濱農浪漫

このコーナーでは、横浜で頑張っている農家さんを紹介していきます。

石川知成さん 瀬谷区橋戸

石川知成さん 瀬谷区橋戸

横浜市瀬谷区の西部で梨を主力に生産する石川果樹園の2代目として、両親と農業に励む石川知成さん。Uターン就農し、前職の自動車部品メーカーでの開発者気質を発揮して新たな栽培手法を探るとともに、JA果樹部の仲間と技術を高め合っています。飲食店や量販店が建ち並ぶ環状4号線に沿いにある園は市街化区域で、白い多目的防災網の存在感が際立ち、周辺住民に配慮した農業生産を心掛け、地域に理解され、支持される都市農業を実践します。

石川知成さん 瀬谷区橋戸

園は80アールあり、主力の梨を40アールの園で栽培。そのほか柿やキウイフルーツを手掛けます。今年は8月上旬から「幸水」の収穫が始まり、「豊水」「秀玉」をリレーしながら9月中旬ごろまでに8トンの収量を見込みます。販売は直売と宅配のみで、リピーター(再来訪者)も多く直売には連日行列ができるほど人気です。さらなる消費者のニーズに応えるため、2年前から人気品種の「幸水」を主体に改植。収穫ゾーンとローテーションさせ、収量をなるべく落とさずに早期成園化を目指します。

石川知成さん 瀬谷区橋戸

「浜なし」は平成27年にJA横浜が商標登録。3年前にかながわブランドにも登録され、年々商品価値を高めています。「先輩たちが築き上げてきたものを守っていかなければいけない。時代につないでいくのも自分たちの役目」と話します。JA果樹部は技術を惜しげもなく教えてくれる先輩が多く、次世代を育てる環境があります。石川さんもこの中で同世代と切磋琢磨してきました。「農業は毎年違う環境で作る難しさがある。どんな状況にも臨機応変に対応する面白さが最近になって分かってきた」と、笑顔を見せます。

塩川 吉徳さん 保土ケ谷区藤塚町

塩川 吉徳さん 保土ケ谷区藤塚町

花苗を生産する「塩川ナーセリー」園主の塩川吉徳さんは、結婚を機に6年目から父・藤吉さんから経営を独立しました。公共事業では連携し、花の地産地消に力を注ぎます。高校卒業後、県立農業アカデミーで鉢物コースを2年間専攻。その後は鶴見区内で造園を1年間学び、家業を継ぎました。主力の栽培品目はカーネーション、パンジー・ビオラ、ガーデンシクラメンで、50品種ほどになります。

塩川 吉徳さん 保土ケ谷区藤塚町

6年前から妻・玲子さんの発案で、切り花用品種をポットで栽培。立体感が出せる品種で、消費者嗜好に応えています。出荷先は近隣のJA横浜「ハマッ子」直売所3店舗が中心。ほかに横浜市緑の協会が取り組む、市内の緑化支援「花やぐまち助成事業」を活用する諸団体に花苗を供給。イベントにも出店し、横浜育ちの花の普及拡大に余念がありません。

塩川 吉徳さん 保土ケ谷区藤塚町

山下公園で4月に開かれた花壇展では、JA横浜が市長賞と市民賞をW受賞しました。今年は花卉部の中央ブロックが担当。デザインを引き受けたのは塩川さん。幅4㍍、奥行き2・5㍍の花壇の植え込みスケッチを3案描いた頃には、「JA横浜の名を背負っての出展に意欲が沸いた」と振り返ります。プランでは、計算し尽くした設計や同系色のグラデーションはあえて避け、花で輪郭線を描かない自然な植え込みにも徹しました。主役には、ピンクや黄色といった元気が出る配色を選択。「花好きな市民が好きな色の花を直売で買ったら、こうなった―というのが発想の原点」で、市民投票での最多獲得もうなずけます。角材はアンティーク調の白塗りでは、主役の花より目立つため、木材本来の色を生かしました。「部員の皆さんは日頃からフランクに接してくれる。共同作業でも直売所でも。『あの花、渋めの品種だけど、どうやって作るの』と聞けば、分け隔てなく教えてくれる」。こういう部員仲間の姿勢は、消費者への気遣いにも通じています。

羽太喜久雄さん 戸塚区影取町

羽太喜久雄さん 戸塚区影取町

横浜市内でも希少な苗木農家の羽太喜久雄さんは、県が取り組む花粉症対策に協力しています。少花粉のスギやヒノキ、無花粉スギに加え、全国で初めて神奈川県が発見した「無花粉ヒノキ」の育苗を担っています。令和元年から県に委託され、育苗に着手。昨年、152本を初出荷しました。このヒノキは種子ができないため、挿し木で育てます。県から提供される挿し穂をコンテナに直接植え付け、1年間は無肥料で発根させ、翌年は肥料を与え、出荷規格まで生長させます。

羽太喜久雄さん 戸塚区影取町

以前から少花粉スギ・ヒノキ、無花粉スギの育苗を手掛けている羽太さんでも、無花粉ヒノキの育苗には苦労したそう。「スギは100%活着するが、このヒノキは活着させることが難しく、初回分は約70%だった。翌年から作業時期や遮光資材を見直し、90%まで改善させた」と話します。一般的な挿し木専用の品種に比べて発根が弱いため、出荷まで倍の時間をかけているといいます。羽太さんが大切に育てた苗木は、南足柄市にある「県立21世紀の森」などに順次植樹されています。

羽太喜久雄さん 戸塚区影取町

花粉症の流行が原因で、スギやヒノキが敬遠されるようになりましたが、伐採するだけでは自然環境が維持できなくなってしまいます。県では全国に先駆けて無花粉・少花粉品種への植え替えが進められていますが、「まだまだ十分とは言えない」と羽太さん。最近では県産の木材を使った木造高層ビルが建設されるなど、国産木材への注目が高まりつつあります。「県産木材の消費量が増えれば、無花粉・少花粉品種への植え替えがさらに進む。食材だけでなく、木材の地産地消にも目を向けてほしい」と期待を込めます。

山本 達夫さん 港北区新吉田町

山本 達夫さん 港北区新吉田町

山本達夫さんが営む「奥平園」。祖父の代ではこの地域の名産だった桃を主力に、野菜や栗を生産していました。平成に入り、第3京浜道路の都筑ICや市営地下鉄グリーンラインの開通により近隣に住宅が増え、庭木の需要が高まったことを受けて父の代で植木に転換。近隣の住宅200戸の庭造りを請け負ったそうです。山本さんは現在、農地を守ることと苗木の品質維持を考えて植木生産を専門に。造園会社やJAの植木部員からの幅広いニーズに応えるため、妻の早苗さんと長男の浩(ひろ)気(き)さんの3人で奮闘しています。

山本 達夫さん 港北区新吉田町

取材した3月下旬、奥平園ではかんきつ系の苗木の植え替え作業に追われていました。ほ場は数か所に分かれ、合計で1・8ヘクタール。新吉田町は谷戸になり、場所によって2、3度の気温差があるそうです。「土も赤、黒で性質が違う。60以上ある栽培品目もそれぞれ特徴があるので、木に合った環境を選んで管理している」と山本さん。同園の苗木の7割は挿し木や接ぎ木での増殖と、実生から育てたもので、「労力はかかるが、一から生育するのでお客さまに安心して送り出せる」と、品質に自信をのぞかせます。

山本 達夫さん 港北区新吉田町

長男の浩気さんは大学卒業後に地元の園芸店に就職。世の中のガーデニング事情や園芸商品の流通について学び、9年前にUターン就農しました。山本さんは近年の植木生産は単価が下がるなど不安定で、苦労することが分かっていたので、継いでほしいとは思っていなかったそうです。「代々受け継いできた農地を息子が守ると決めてくれたのは親として本当にうれしい」と安どの表情。浩気さんは「一緒に働いてみて改めて父の偉大さを実感した。近い将来、自分の名前で苗木を買ってもらえるようになりたい」と目を輝かせます。

舞岡四季の会 戸塚区舞岡町

舞岡四季の会 戸塚区舞岡町

水田や畑、梅林、竹林など、豊かな自然空間が広がり、元気な農業が息づく舞岡ふるさと村。市営地下鉄「舞岡駅」から地上に出てすぐ、ふるさと村を象徴するJA横浜「ハマッ子」直売所舞岡やがあります。店内に併設された加工所が、漬物など農産加工品を手掛ける女性グループ「舞岡四季の会」の活動舞台。ふるさとの味を守り続け、今年で結成30周年を迎えます。

舞岡四季の会 戸塚区舞岡町

加工品は20種類ほど。一番人気はユズを入れたダイコンの甘酢漬け「舞漬け」。シャキシャキした歯ごたえが特徴で、地場産の収穫がない8月以外は通年で販売します。ウメやタケノコといった、地域の特徴である里山の恵みを使った加工品も人気。添加物を使わないため、毎日少量を作ります。高菜漬けだけは少しでもきれいな緑色を維持するため冷凍販売するなど、手間を惜しみません。

舞岡四季の会 戸塚区舞岡町

会員は5人。当番制で一人当たり月10日ほど作業します。野菜は原則、同店から仕入れ、B品やC品にも相応の対価を支払います。会員の大半は野菜農家で、同店の出荷者でもあります。出荷物には生産コストがかかることを知るからこそ、無償で譲り受けることはしません。自家の野菜でも店を通して仕入れるのがルールです。全員が70代。「漬物石が重くて持ち上がらない」と笑い合う。44人いた会員は徐々に減り、一人にかかる負担は増えましたが、無理をせず自分たちのペースで活動を続けてきました。集まれば世間話に花が咲き、加工場は皆さんにとって元気をもらえる基地でもあるようです。

美濃口等さん 泉区下飯田町

美濃口等さん 泉区下飯田町

相鉄いずみ野線・ゆめが丘駅から徒歩5分。「駅チカ」の観光イチゴ狩り園「ゆめが丘農園」を営む美濃口等さんは今季で開園11年目。生産も安定し、横浜産イチゴへの需要に応え、販売手法の充実を図っています。栽培当初、市内のイチゴ農家は少なく、美濃口さんは平塚市の生産者から栽培手法や資材の調達を習得。「初めの3年間は暗闇の中。ダニやうどん粉病の発生、受粉で飛び回るセイヨウミツバチの死滅、そして栽培の難しさ…。安定したのはここ5年」と振り返ります。

美濃口等さん 泉区下飯田町

現在の栽培面積は約30アール。腰高のベンチが並ぶ高設栽培を採用。用土には最適な栄養分を含んだ養液が流れ、パイプに流す温湯で株の冷えを抑えます。苗は天候不順によるリスクを想定し、自家栽培7割、購入3割と併用。葉色の濃い元気な株は、炭酸ガスで光合成を促した成果です。広いハウスはバリアフリーのため、ベビーカーや車イスでも安心。栽培品種は粒の大きさ、人気、甘味の点から「紅ほっぺ」「章姫」「おいCベリー」「よつぼし」の4品種です。

美濃口等さん 泉区下飯田町

1月中旬から5月中旬まで続く予約制のもぎ取り。例年、土・日・祝日の営業で、平日は出荷に専念したが、2月中旬からは平日も対応。来園者の集中回避を図ります。出荷先は、横浜市中央卸売市場とJA横浜の一括販売、3~4店舗のケーキ店。今季からは横浜市のふるさと納税返礼品にも選ばれました。横浜赤レンガ倉庫で毎年2月に開催(昨年は中止)の「ヨコハマストロベリーフェスティバル」には仲間たちと出店。完熟イチゴを持ち込むと「横浜のイチゴだ」と注目されました。さらに昨年、大手旅行サイトで、人気のイチゴ狩り施設として受賞し、栽培にも力が入ります。

大川裕司さん 緑区鴨居

大川裕司さん 緑区鴨居

「直売所に並ぶ野菜の中で、自分だったらどれを選ぶか。見た目や大きさ、数量など、消費者に好まれる荷造りを心掛けている」と話す大川裕司さん。50アールほどの畑で露地野菜15~20品目を生産し、JA「ハマッ子」直売所に出荷しています。「採算性よりも品質重視している」という言葉の通り、作業場には形や大きさのそろった美しい野菜が並んでいます。

大川裕司さん 緑区鴨居

“質の良い野菜作り”に対するモチベーションを高めるため、大川さんはJA野菜部の持寄品評会に積極的に出品。「最初は『参加することに意義がある』と考えていた。当時は全く入賞できず、次第に『参加するからには良いものを出そう』という気持ちに変わった」といいます。先輩農家やJA技術顧問からの教えを頼りに栽培技術を高めた結果、今ではたびたび上位に名を連ねるように。「自分の野菜を評価してもらえることは、生産意欲と品質の向上につながる」と笑顔を見せます。

大川裕司さん 緑区鴨居

農作業は、妻・孝子さんとの二人三脚。大川さんの就農を機に、孝子さんも農業を手伝うようになり、今では接ぎ木や摘果作業などで繊細さを発揮しています。「妻がいれば2人分以上の力が出せるが、自分1人では4分の1程度のことしかできない。内助の功は絶大だよ」と感謝を口にします。周囲への感謝・尊敬の気持ちを大切にしている大川さん。「皆さんの支えがあるおかげで、ここまでやってこれた」という言葉には、温かな人柄が表れています。

角田雅久さん 栄区上郷町

角田雅久さん 栄区上郷町

栄区はかつて鎌倉郡だった名残から、鎌倉時代の史跡も町に数多く点在しています。角田雅久さんは昔からの引き売りや直売での対面販売を大切にし、家の近くで新鮮野菜が買えることを消費者に伝えています。非農家育ちという同じ経歴の娘婿・泰蔵(たいぞう)さんと共に農業に励み、日々奮闘。食農教育や食品ロス問題の関心が高く、次代を担う子どもたち向けの青空授業や子ども食堂へ野菜を提供するなど、地元の食を支えるために尽力しています。

角田雅久さん 栄区上郷町

管理する畑は70アールで、取材した11月はホウレンソウやダイコン、長ネギなどの冬野菜が収穫期を迎えていました。角田さんはJA野菜部本郷支部の支部長も務め、2年前からは近隣住民にもっと地場産の野菜を食べてもらいたいという思いから、部員4戸とともに毎週水曜日に本郷東支店の前で直売を始めました。消費者へは評判が口コミで広がり、地産地消に一役買っています。「集客には苦労したが、職員の協力もあって今では開店前から行列が出来るほどになった」と笑顔を見せます。

角田雅久さん 栄区上郷町

上郷町は宅地化が進み、農地は減少傾向。その一方で、住民からの「緑を守ってほしい」という声も根強いそうです。角田さんはここ数年、小学生向けに食農教育にも力を注ぐようになりました。「トマトはどうやってできるのか」「この種子から何の野菜ができるのか」など児童の好奇心は無限大で、毎回質問攻めにあっています。「子どもたちにとって農業が当たり前にある環境を残したい。私自身も教えられることも多く、この時間があるからこそ、農業はやめられない」と、目を輝かせます。

村田敦さん 都筑区仲町台

村田敦さん 都筑区仲町台

村田敦さんは、農業に打ち込むかたわら、DJとしても活動する「DJファーマー」です。日中は小松菜とホウレンソウを市場出荷する実家の村田農園に従事しながら、休場日の前日や早朝・夜間などに時間を捻出し、自身が主体となって西洋野菜を生産し直売。村田農園の一部門として、「&ARTS FACTORY」という自身のブランドを設立しました。畑の一画に無人直売所を設置し、外観はアメリカで見たマルシェをイメージ。若い人にもアピールするため、リヤカーやコーヒー豆の木樽で雰囲気を演出します。販売日や品目は、自身のインスタグラムで情報発信しています。

村田敦さん 都筑区仲町台

隙間時間に村田さんが手掛けるのは、ルッコラ、パクチー、ラディッシュ、ビーツ、カーリーケールなどの西洋野菜。地元飲食店の依頼で、ラディッキオという葉菜類のイタリア野菜にも挑戦中です。農作業は基本一人。堆肥散布も畝立てもマルチ張りも手作業の重労働ですが、「お客さんが待っているのでがんばれる」と、疲れを感じさせません。販路は自身の直売所と、JA「ハマッ子」直売所メルカートきた店や一括販売への出荷が中心。IKEA港北や都筑区役所での都筑野菜朝市にも出店します。

村田敦さん 都筑区仲町台

村田さんは大学在学中からDJを始め、「SELECTOR ARTS」というDJネームでレゲエのミックスCDを何枚もリリース。卒業後に就農し、その間も音楽活動を続けていましたが、本場のニューヨークでプレイしたいという夢が捨てきれませんでした。留学を決意し、5年間の武者修行。帰国後も実家を手伝いながら、音楽中心の生活を続けてきました。40歳を目前に一線から退くことを考え始め、DJは趣味にとどめて、本気で農業と向き合う覚悟を決意。現在DJの仕事は月2回程度で、9割は農家の顔です。「DJでは、この曲の次にどんな曲が来たらお客が喜ぶかを考える。人を楽しませたい気持ちは農業でも同じ。いつか畑で農業と音楽がクロスするフェスができたら」と話します。

秋山良太さん 瀬谷区上瀬谷町

秋山良太さん 瀬谷区上瀬谷町

今年5月に就農した秋山良太さん。上瀬谷農業専用地区にある畑で、祖父母と共に農作業に従事しています。栽培技術やノウハウは勉強中ですが、地元野菜をPRするため、就農前からインスタグラムを活用した情報発信に取り組んでいます。アカウントのフォロワーは4600人を超え、家庭菜園や食に関心の高い人に好評。「普段食べている野菜の栽培過程を知らない消費者も多い。『食』を通じて農業や農家にも目を向けてもらえればうれいしい」と期待を込めます。

秋山良太さん 瀬谷区上瀬谷町

秋山さんが特に力を入れているのは、うどの栽培。以前は、上瀬谷通施設跡地の地下室(むろ)で栽培していましたが、同施設が国に返還され室が使えなくなったことで、露地での土ふせ栽培に変更。「相模うど」として生産する一方で、株数を大幅に減らしていました。しかし、「畑で育つうどを見て、子どもの頃の記憶がよみがえった」といいます。暗い室の中で真っ直ぐ伸びる純白のうどに、当時の秋山さんは強い興味を持っていたそう。「代々栽培してきた根株を絶やしたくない」と、現在はハウス栽培の「横浜瀬谷うど」生産に向け、準備を進めています。

秋山良太さん 瀬谷区上瀬谷町

地元農業や農産物の情報発信ツールの一つとして、今年から「農カードProject」にも参加。この取り組みは、生産者の名前や顔写真、生産物などを掲載したカードを商品に同梱し、農業をPRするものです。全国的に広がりつつありますが、県内での登録者は少数だったことから、「皆とは違うことやろう」と参加を決めました。登録にあたり、農園のネットショップも開設。本格的な運用に向けて知人に協力してもらい、試験販売に取り組んできました。秋山さんは、「カードを活用し、うちの野菜をより多くの人に知ってもらいたい」と、目を輝かせます。

矢島久道さん 栄区田谷町

矢島久道さん 栄区田谷町

「農業の知識はほぼゼロの状態で就農し、今まで全て独学でやってきた」と話す矢島さん。実家は元々、米を主力に生産していましたが、当時の減反政策で作付け面積の減少を余儀なくされ、父が野菜の栽培を始めたといいます。その頃の販路は市場出荷のみだったため、品目数は多くありませんでした。矢島さんが就農してからは、直売所での販売に向けて品目を増やし、現在は90アールの畑で年間80品目ほどを手掛けています。

矢島久道さん 栄区田谷町

矢島さんが始めた品目の一つがトマト。1年目の出来は上々でしたが、2年目に葉の変色や枯れの症状が出てしまいました。病害虫や生理障害の知識が少なかったため、原因が分からずJAなどに相談。褐色根腐病だと判明し、土壌消毒を勧められました。この頃に出合ったのが、「漢方農法」。この農法で使う肥料や薬剤は、人が服用する漢方の煎じカスなどから作られ、人体への害がないのが特徴です。「自分の子どもにも、安全な野菜を食べさせてあげたい―」。そんな思いも重なり、漢方農法を導入しました。

矢島久道さん 栄区田谷町

矢島さんの作る野菜は、健康意識の高い人やオーガニック野菜に関心を持つ人に好評。直売所の常連客の中には、自然食品専門店や飲食店を営む人もいます。「うちのモットーは、『地産地消』と『旬食旬菜』。その時季にとれる健康な野菜を、手頃な値段で売っている。儲けは少なくても、お客さんによろこんでもらえるのがうれしい」と笑顔を見せます。来店客とのコミュニケーションも楽しみの一つだといい、直売所には明るい話し声と笑顔が溢れています。

大曽根達也さん 青葉区寺家町

大曽根達也さん 青葉区寺家町

里山の風景が豊かな農環境を特徴づける青葉区寺家町は、果樹栽培が盛んな地域。園の目印になる青い防鳥網が町に溶け込んでいます。その中に「浜なし」を主力に栽培する「大曽根園」があり、大曽根さんは長男・裕樹さんと共に農業に励んでいます。最新技術の導入には常にアンテナを張り、最近では市内でもいち早く黄色LED(発光ダイオード)防蛾灯を設置。教科書通りに管理されたほ場にはJA横浜の技術顧問も一目置いています。

大曽根達也さん 青葉区寺家町

現在、田畑合わせて80アールを管理し、そのうち梨は30アール。「幸水」「あきあかり」「豊水」など5品種をリレーさせ、今年の収穫は9月中旬ごろまで続きました。「基本に忠実がモットー。そこから自分に合った栽培スタイルに改善している」と話し、行き届いた管理が評価されて平成21年度には神奈川県果樹立毛共進会で県知事賞、昨年は2位を受賞。園の評価を高めました。北尾一郎技術顧問は「樹勢管理や着果のバランスが良い」と称えています。

大曽根達也さん 青葉区寺家町

次代につなぐため、樹の改植も進めています。収量の減少を抑えるため、他県の果樹園を参考にして老木の間に2年間育成した苗を植える方法を採用。この苗は間伐予定樹として育て、植え替えた若木が結実するまでの代わりを務めます。「この方法なら収量が確保でき、お客さんをがっかりさせずに毎年販売ができる」と話します。2年前には長男の裕樹さんがUターン就農。「まだまだ未熟だが、やる気であふれている。自分の技術を全て伝えていく。来年で70歳になるので、そろそろ楽がしたいな」と笑顔を見せました。

籾山広子さん 瀬谷区下瀬谷

籾山広子さん 瀬谷区下瀬谷

瀬谷区下瀬谷を通る環状四号線の左右に広がる一団の農地。その一角に、籾山さんの「下瀬谷みのり農園」があります。女性一人でもできる農業を――、選んだのはブルーベリーの摘み取り園でした。19㌃の園で、約300本の管理をほぼ一人で担います。収穫期間が長くなるよう、品種は20種類以上をリレー。大粒のハイブッシュ系が約100本。残りは、7月から8月に摘み頃を迎えるラビットアイ系。週5日、観光農園としてお客を迎える他、直売やJA横浜「ハマッ子」直売所瀬谷店などに出荷します。

籾山広子さん 瀬谷区下瀬谷

籾山家は元々、芝の生産が家業。昭和44年から生産を始め、最盛期は2㌶近く管理していたといいます。しかし、人工芝の普及もあって、平成以降の需要は減少の一途。高齢の母と2人だけで続けるのは難しく、生産を止めることにしました。だが、農地は管理しなければなりません。一人でできる農業を考え始め、漠然とイメージしたのがブルーベリーの観光農園。「作業負担が少なく、収穫はお客がしてくれる。これなら一人でもできそうだ」――始める前はそう思ったそうです。実際、植え付けから3年間は株を大きくするために実を成らせないので、「これなら楽だ」と感じていたとか。その後に試練が待っているのですが…。

籾山広子さん 瀬谷区下瀬谷

何十年も芝を生産した畑が、弱酸性の土壌だったことが幸いしました。ブルーベリーは酸性土壌が適しているからです。しかし、誤算もありました。寒冷地に向くハイブッシュ系の苗木が、気候に合わず50本ほど枯れてしまいました。最大の誤算は管理の大変さ。冬場の剪定に4カ月かかります。乾燥に弱いブルーベリーは十分なかん水が必要ですが、畑に井戸はありません。軽トラに積んだタンクに水をため、手作業で地道にまきます。家族の協力があってこそできる一人農業。力仕事は男手を借ります。母には除草、長女にはホームページの運営やインスタグラムでの情報発信と、手が回らない部分を補ってもらいます。籾山さんは、「作業に追われる毎日だが、始めて良かったと今は充実している。今後はラズベリーとブラックベリーの摘み取りも視野に入れたい」と、その表情は充実感に満ちていました。

鈴木勇次さん 金沢区釜利谷

鈴木勇次さん 金沢区釜利谷

金沢区釜利谷地区の3方向が山に囲まれた谷戸の一角に、ハウスを構える鈴木さん。周辺には湧き水が水路となって流れ、以前は水田や蓮田でした。ハウス5棟15アールを含む計38アールを一人で担い、トマトやジャガイモなど年間25品目を生産しています。主力の大玉トマト「桃太郎ファイト」を土耕栽培。「釜利谷トマト」の愛称で親しまれ、隠れた名産品として人気です。父が残した施設を生かし安全、安心でおいしい野菜作りに力を注いでいます。

鈴木勇次さん 金沢区釜利谷

土へのこだわりが人一倍強いため、父の代から苗を仕入れる愛媛県の種苗会社へ出向き、栽培環境や土壌を研究しました。さらに、新潟県魚沼市で有機栽培のコシヒカリを生産する農家からは、魚粉の使い方を取得しました。トマトの収穫期が過ぎると、総合土壌消毒材を散布し、表面をビニールシートで20日覆って太陽熱消毒を実施。株の過剰な成長を促す窒素分を減らすため、土壌洗浄もします。仕組みは隣接した水路をせき止め、地下の土管を通しハウスに水を導き、水田状にして土を洗浄します。

鈴木勇次さん 金沢区釜利谷

トマトはハウス2棟10アールに、約1,000株を定植。収穫は、4月から7月までと11月から翌年2月までで、棟ごとにずらします。2、3段目のトマトが赤くなる頃には土壌の水分を切り、糖度を高めます。
JAの「ハマッ子」直売所メルカートいそご店、本郷店に出荷する他、自宅前の直売所で販売。「お父さんの味に近づいたわね」と父の代からの常連客の言葉に、「親父の味は越えたと思ったんだけどな」と鈴木さん。その表情には自信がみなぎっています。

土志田秋夫さん 港北区鳥山町

土志田秋夫さん 港北区鳥山町

町の園芸店として、地域住民に親しまれている土志田園芸店。自家生産の花苗はもちろん、切り花やフラワーアレンジメント、肥料などを幅広く取りそろえ、家族で店舗を切り盛りしています。三男の秋夫さんは、JA花卉部に所属し、花苗の生産に力を注いでいます。元々は、父の手伝いをしながら栽培に携わっていましたが、父が体調を崩したことで直接ノウハウを学ぶことができなくなってしまったため、先輩農家のもとに通い、種まきから水やり、施肥のタイミングなど基礎から勉強し直しました。

土志田秋夫さん 港北区鳥山町

現在、4棟のビニールハウスと8区画に分けた温室5棟で、年間10品目ほどを生産。その他、野菜苗も生産しています。主力はニチニチソウとシクラメン。ニチニチソウは、昨年まで3回に分けて出荷していましたが、今シーズンから4回に挑戦。「花苗が減ってくる時期でも、店頭に品物を並べられるようにしたかった」と話します。栽培面で気を配るのは、水やり。毎朝、土の表面が湿る程度に抑え、雨の日には1日空けています。「水のやりすぎは、徒長の原因になる。締まりの良い苗を出荷できるようにしている」と笑顔を見せます。

土志田秋夫さん 港北区鳥山町

同店では、花卉農家では珍しい個別宅配も受けています。「花苗や野菜苗は、一度にまとめて購入するお客さんも多いですが、移動手段が車でないと持ち帰るのは大変。電話やFAX、来店時に注文を受けている。基本的には近隣への配達が多いですが、エリアは指定していない」と言います。横浜産の花や園芸の魅力を多くの人に知ってもらうための苦労を惜しみません。「家族皆で協力しているからこそ、できること。これからも、より高品質な花苗・野菜苗の生産を目指し、努力していきたい」と目を輝かせます。

餅田哲也さん 神奈川区羽沢町

餅田哲也さん 神奈川区羽沢町

令和2年にかながわブランドに登録された「よこはま羽沢レタス」。神奈川区の農家7戸からなる羽沢洋菜出荷組合が手掛けています。3年前、メンバーの餅田家に加わった哲也さんは、義父・幸彦さんと二人三脚で農作業に励んでいます。作付けする菅田・羽沢農業専用地区は、みなとみらいや新横浜のビル群を望める場所にあり、横浜市中央卸売市場に近いことが強み。担当者との連携が密に取れ、鮮度・品質の良い作物を安定出荷し続けることで高い評価を得ています。

餅田哲也さん 神奈川区羽沢町

栽培で最も大切なことは温度管理。定植後はトンネルで保温し、外気が暖かくなり始めたら換気をして結球を促します。冬場は土壌の乾燥にも注意を払い、かん水で凍害が起きるので、朝方に水気が残らないようにし、畑はレタスの後に緑肥、キャベツと順に作ることで連作障害が起きない工夫をします。 全量が市場出荷で、〝売り〟は鮮度。日の出と共に収穫して7時には「羽沢レタス」と書かれた段ボールで市場に納めているので、日中にはスーパーに並び、品質を維持したまま消費者に届けることが出来ます。

餅田哲也さん 神奈川区羽沢町

暖かくなり始めた3月中旬、餅田さんの畑では「よこはま羽沢レタス」の収穫作業に追われていました。市場から「産地の出荷量が少ない時期に出せないか」と要望を受け、播種・定植時期をずらして栽培に取り組んだことで例年より2週間早くスタート。餅田さんは「市場担当者が売るために様々な提案をしてくれるので、私たちは作ることだけに集中できる」と話します。管理する畑は1・5㌶で、そのうちレタスは30㌃。収穫は4月末ごろまで続き、早生の「Jブレス」、温度変化による変形球が少ない「スプリングアース」をリレーさせます。

石井直樹さん 栄区笠間

石井直樹さん 栄区笠間

石井造園は昭和41年に、父親が設立。石井さんは、建設関係の専門学校を卒業後、東京・杉並の造園会社で5年間修業し、25歳で石井造園に入社しました。工事現場で経験を積み、29歳から営業と経営に携わるように。年齢が若いことで競合他社から軽く見られることもありましたが、持ち前のポジティブ思考で道を切り開いてきました。父親の体調が思わしくなく、早期に代替わりを望んでいたため、38歳で社長に就任。仕事上で父親と衝突したことは一度もなく、潔い引き際に、石井さんは今も敬意を抱いています。

石井直樹さん 栄区笠間

石井造園の強みは、社員に樹木医がいること。木が健全か、衰弱しているかが、いつでも診断できます。科学的な根拠を提示できるよう、「ピカス3」という装置を導入しました。樹木にセンサーを取り付け、センサー間の音波の速度を計測し、樹木断面の腐朽度合いを診断。倒れる危険性や、今後の処置の必要性など、予測に役立てます。個人邸の庭や外構工事では、オーナーの希望を実現できるよう、綿密に打ち合わせをして作業をすすめます。こうした社員の成長した姿を見ると、石井さんは仕事の達成感を感じるといいます。

石井直樹さん 栄区笠間

石井さんが社長就任後、経営理念に「幸せを共有する企業」を掲げ、体系的にCSR(企業の社会的責任)に取り組みます。緑化に携わる事業者として、環境問題への取り組みは責務と考え、市民への苗木の無料配布を10年以上続け、累計で7千本ほどに。昨年は県内で急拡大するナラ枯れの発生場所を、市民から寄せられた情報を元にWeb上で確認できるマップ作りにも取り組みました。こうした活動が高く評価され、市のSDGs認証制度「Y-SDGs」の第1回で、最高ランクの最上位認証を受賞。「永続的に経営していくには、未来から必要とされる企業であるべき。今回の認証を励みに、CSRをSDGsのゴールと関連づけて展開したい」と、未来を見据えます。

落合勉さん 緑区小山町

落合勉さん 緑区小山町

中村園の園主・落合勉さんは長男の憲保さんと共に、約1.2ヘクタールの果樹園で梨とブドウを生産します。主力の梨栽培では1年ほど前から園の一部21アールで「ジョイントⅤ字トレリス樹形(JⅤ―トレリス)」を導入。これは主枝同士をつなげ、側枝がⅤ字で上60度に伸びる樹形で、今までの平棚栽培で見られる水平にした枝から均等に花芽を出すというセオリーを180度変えた県の特許技術です。果実の収量を左右する剪定作業では上向き姿勢から解放され、作業負担の軽減につながります。

落合勉さん 緑区小山町

梨は主力の「幸水」や「豊水」をはじめ、8品種を栽培。そのうち、JⅤ―トレリスで仕立てる品種は「豊水」や「あきづき」の他に、花芽が安定的に着く「凜夏(りんか)」、極早生種の「香麗(こうれい)」など、新品種にも採用。収穫時期をずらし、長期間の収益を見込みます。主枝の本数で区分される仕立て法も時代によりさまざま。以前からの4本仕立てや3本仕立ての樹は減らし、2本仕立てがメイン。その他に梨栽培では珍しい上から見ると主枝が「H」の形になるH型主枝の樹形も取り入れてきました。

落合勉さん 緑区小山町

恩田川流域にある小山町は、昭和40年以前から梨栽培に取り組んでいた地域の一つで、落合さんは横浜北農協当時の初代果樹部長であった父の背中を見て育ちました。元々、自動車関係の会社員でしたが、父が体調を崩したことで就農を決意したといいます。
周辺果樹農家11戸による小山果樹組合では、JR横浜線・中山駅前直売所で共同販売し、落合さんも出荷者の一人。シーズンには大好評です。「昔から農家同士の結びつきが強く、仲間の存在は励みになる」と目を細めます。

藤又琢さん 旭区上白根町

藤又琢さん 旭区上白根町

非農家の会社員から心機一転、野菜農家の道へ進んで3年目の藤又さん。「特に野菜が大好きというわけでもなかったけれど、地元旭区で見た畑の風景が頭に残っていた」と話します。新規就農までには、農業技術の習得、農地の確保、営農計画書の作成・審査など、さまざまな手続きがあり苦労する面も多かったそうです。しかし、藤又さんは「農業は、長く続けていくという意思がなければ、手を出してはいけない世界。数々のハードルは、安全・安心な食や農業を守っていくために必要なものだと気付いた」と振り返ります。

藤又琢さん 旭区上白根町

現在、8カ所・約1.5ヘクタールの畑で、兄・永さんと共に年間20~30品目の野菜を生産。中でも、周年栽培の小松菜、夏のナス、冬の長ネギが主力品目です。「その時期にできるものしか作らない。地元の消費者に旬を味わってもらうことこそが本当の地産地消だと思う」と露地栽培にこだわります。これらの野菜は、地元スーパーやJA横浜「ハマッ子」直売所メルカートつおか店、学校給食、飲食店などに出荷します。最近では、コロナ禍を受けて販路を分散させるため、ネット販売もスタートさせました。

藤又琢さん 旭区上白根町

「就農前の農業のイメージは、『一人で黙々とやる仕事』だったが、実際は横のつながりがとても広いことに驚いた」と話す藤又さん。先輩農家や出荷先からのつながりで得た人脈を生かし、さまざまな場面で地元農業のPRに力を注ぎます。大学生が取り組む地元野菜の直売や商品開発に協力したり、子どもや障害のある人たちの収穫体験を受け入れたり―。イベントなども声が掛かれば、積極的に足を運びます。「たくさんの人に畑に来てもらい、自分のように農業に興味を持つ人が増えればうれしい」と思いを語ります。

生駒順さん 戸塚区小雀町

生駒順さん 戸塚区小雀町

戸塚区小雀町にある生駒植木㈱は、設立から1世紀の歴史があります。生駒さんは父から継いだ会社を、これまでの慣習に捉われずに発展させ、個人邸の庭造り、マンションや公共施設の緑化事業に携わり、地域に貢献。小学生向けに緑育も始めました。最近ではJA共済のCMに出演したことでも知られ、現在はJAの植木部長を務め、横浜産植木の普及にも力を注いでいます。

生駒順さん 戸塚区小雀町

植木は流行の移り変わりが激しく、最近はアオダモや常緑ヤマボウシが人気。取引先の要望に全て応えられるようアンテナを高く張り、多品種を揃えるために東北から九州まで仕入れに行っています。庭木よりも緑化樹が中心で300品種、3万本を15ヘクタールの圃(ほ)場で管理しています。多様なニーズに対応できることから取引先からの信頼も厚く、大きな事業として横浜市と5年前から打ち合わせを重ね、令和2年に全面供用を開始した横浜市役所新庁舎の緑化にも協力しました。

生駒順さん 戸塚区小雀町

現在、取り組んでいるのは廃棄物の再利用を図る静脈産業の確立。造園やメンテナンスの際に出る剪定枝や大きく生育しすぎて売れなくなった木を捨てずにたい肥にして、圃場で有効活用することを目指しています。他にも、生駒さんが発起人となり、全国にいる日本植木協会の組合員と共に小学生向けに植木苗の配布を始めました。「誰もが経験してきたアサガオ栽培の代わりにもなる存在にしたい」と、子どもの頃から植木と親しめる環境を提供しています。

山本忠夫さん 港北区新吉田町

山本忠夫さん 港北区新吉田町

港北区新吉田町は梨の産地として古い歴史を持つ地域。山本果樹園は、第3京浜道路都筑インターチェンジから車で約2分の立地で、夏はナシとブドウ、冬はキウイフルーツを生産・直売します。園主の山本忠夫さんは、市内でのキウイ栽培の先駆者的存在。独自に剪定技術を考案し、大玉のキウイづくりを目指して日々向上心を燃やしています。

山本忠夫さん 港北区新吉田町

キウイフルーツの木は25本で、主力の「ヘイワード」の他、果肉が黄色の「紅妃」など4品種を栽培。収穫は10月下旬から11月中旬まで、品種をリレーします。糖度が6度を超えると収穫適期で、サイズごとに冷蔵庫で保管します。販売は直売と宅配のみ。直売日から逆算して追熟させ、14度まで糖度を高めます。

山本忠夫さん 港北区新吉田町

山本果樹園としてホームページを開設し、日々の農作業を日記形式でアップ。忠夫さん自身が文章を書き、写真も撮ります。今年は巣ごもり需要も追い風となって、梨の販売時期には1日のアクセス数が400を超える日もあったといいます。
また、JAの果樹部副部長を務め、同部新田支部長とキウイフルーツ班班長を兼務する多忙な日々。横浜産キウイフルーツの知名度向上に尽力します。

小川喜良さん 神奈川区菅田町

小川喜良さん 神奈川区菅田町

神奈川区菅田町にある(有)古屋植木は、建築士やデザイナーなど流行をつくり上げる顧客の需要に応え、個人輸入により日本では珍しい樹種を取り扱っています。4ヘクタールの圃場(ほじょう)で、これまで低木植物や多肉植物、大木など約3,000種類を扱ってきました。時代の流れとともに移りゆくニーズに応え続けています。

小川喜良さん 神奈川区菅田町

個人輸入を始めたのは30年ほど前。以降、仕入れ時は仲介業者を入れずに現地へ渡航します。山に入り生育状態を確かめるのが、経営者の小川喜良さん流です。仕入れる国は、オーストラリアやスペイン、イタリア、モロッコなど。今では小川さんや長男と共に、従業員も交代で同行します。こうした積み重ねで、顧客との信頼を築いてきました。

小川喜良さん 神奈川区菅田町

輸入の第一条件は、日本の露地で育つもの。「たとえ顧客のニーズに合っていても、日本の環境に合わなくては意味がない」と、自身の経験や各国の植木職人とも頻繁に情報交換し、選び出します。人とは違うものを求める傾向にある現代だからこそ、アンテナを高く張り、多様なニーズに応えています。「求められる植木はさまざま。その植物がどこにあろうとも、求め続けていく」と、今後は南アフリカにも目を向けます。

川戸直樹さん 戸塚区東俣野町

川戸直樹さん 戸塚区東俣野町

就農2年目の川戸さんは、妻の佳菜子さんと共に将来の営農について考え、就農初年度から販路や栽培品目の見直し、観光農園化などに取り組んでいます。父の代では、ホウレンソウと小松菜が主力で、販路は市場だけでしたが、農業収入の増加を目指し、JA横浜「ハマッ子」直売所や地元スーパーへの出荷も始めました。現在は、年間18品目の野菜と果実を生産しています。

川戸直樹さん 戸塚区東俣野町

栽培品目を決める際に重視するのは、「よく売れる品」であること。出荷先の担当者から、購入客の動向や店側の要望を聞き取り、参考にしています。近年では、イタリア野菜など珍しい野菜も注目されていますが、流行に左右されない「定番野菜」を基本に、安定的な出荷を目指します。中でも、キュウリは売れ行きが良いため、ハウスを活用して初夏から秋ごろにかけて段階的に栽培しているといいます。さらに今年は、秋どりのトウモロコシの栽培にも挑戦しました。

川戸直樹さん 戸塚区東俣野町

野菜栽培の傍ら、ブルーベリーの養液栽培にも励んでいます。「生産現場に足を運んでもらい、自分たちの作物のファンを作りたい」と、今年6月に観光農園をオープンさせました。柔軟な発想で、さまざまな挑戦を続ける川戸さん。最近では、新型コロナウイルスの影響で市場の状況が目まぐるしく変化していることを受け、販路の選択肢を増やそうと、農産物のインターネット販売もスタートさせました。「5年先、10年先に何が起こるか分からない。将来を予想しながら、今できることをやっておきたい」と話します。

荏原庸二さん 港北区高田町

荏原庸二さん 港北区高田町

港北区高田町の農業振興地域は、みなとみらいや川崎市内のビル群を見渡せるほどの高台にあります。風を受けやすくナスの栽培には不向きな立地ですが、その一角で荏原さんはナス作りに挑んでいます。定年後に就農し今年で10年目。1年ごとの栽培記録を保存管理しているので、これまでの経験を翌年に生かし、栽培管理や防風対策を徹底。荏原さんの畑は長年の改善の跡が見えます。

荏原庸二さん 港北区高田町

現在、7アールで「千両2号」を栽培。4月中旬に接ぎ木苗400本を定植し、3本仕立てを採用。支柱のV字角を約50度にすることで太陽光が入りやすくし、ナス紺色が綺麗に出るようにしています。大敵である風の対策を厳重にするために周囲を樹木で囲い、内側にソルゴー、防風ネットと三重にします。棚にキュウリネットを張り、枝に加え、へたまで光分解テープで固定することで葉との擦り傷を徹底的に抑えています。

荏原庸二さん 港北区高田町

取材した7月下旬はナスの収穫が最盛期を迎え、早朝から収穫作業に追われていました。夏場に枝を大きく切り戻す更新剪定をせずに収穫は11月まで続けます。出荷は専らJAの一括販売で、不定期で「ハマッ子」直売所メルカートきた店にも出しています。荏原さんは「まだキャリアは浅い。今後の改善点は病害虫の防除がどうしても後追いになってしまうので、予防を徹底したい」と、これからもナスと向き合い続けます。

新川一郎さん 旭区今宿南町

新川一郎さん 旭区今宿南町

旭区を東西に走る八王子街道から奥に入った今宿南町には、宅地化の波が及ばない昔ながらの農景観が今も残ります。この地で農業を営む新川一郎さんは、会社経営を辞めてUターン就農し、わずか3年で耕作面積を3haまで拡大しました。品目をキャベツ・ブロッコリー・長ネギの3つに絞り、農作業の機械化を進めながら、長男・次男とともに精力的な生産に取り組んでいます。

新川一郎さん 旭区今宿南町

長ネギの出荷調整作業は機械を使い、根葉切り・皮むき・結束までを流れ作業で行います。将来を見据えて積極的に設備投資をしているところで、長ネギ専用で播種機1台、土寄せ機2台、根葉切り皮むき機(写真)1台を所有。収穫は手作業ですが、乗用式のネギ掘り機を発注中で、作業の機械化を一層進める計画です。JAの一括販売と、「ハマッ子直売所」メルカートつおか店にほぼ全量出荷しています。

新川一郎さん 旭区今宿南町

新川さんは元々、石英ガラスを加工する会社を経営していましたが、父親の高齢化や、貸していた農地にゴミを入れられたことなどが契機となって就農を決意。会社を売却し、農業の道へ足を踏み入れました。当初の労働力は自身だけでしたが、その後、長男が農業を志したことで、本腰を入れて農業経営に取り組み、規模拡大を図ってきました。さらに、自身と長男は露地に専念し、今年から農作業を手伝うようになった次男にイチゴの施設栽培をさせるため、育苗用と栽培用のハウスを新設。新川家の新たな挑戦が始まっています。

田丸哲夫さん 都筑区池辺町

田丸哲夫さん 都筑区池辺町

市内でも農家が多く、農業が盛んな都筑区。池辺と東方、二つの農業専用地区に挟まれた池辺町北部で「たまる花園」を営む田丸哲夫さんは、地域を彩る花苗を生産しています。同区をはじめ、隣接する緑区と港北区の街路や公園の花壇苗を提供し、住民の生活に潤いを与えています。6棟のハウス6アールと露地10アールで、花苗と野菜苗をそれぞれ20品種ほど生産。年間約10万ポットを栽培し、4割を地域の花壇に、3割を近くのJA「ハマッ子」直売所メルカートきた店、3割を市場に出荷しています。

田丸哲夫さん 都筑区池辺町

パンジーやマリーゴールド、ペチュニア――。3区に提供する花壇苗は、ほとんどが田丸さんの自宅から10キロ圏内で、見て回れる距離に咲いています。心掛けているのは、花を目にした人の心が華やぐような色と、長く咲き続ける丈夫さ。「花の魅力をたくさんの人に知ってもらいたい」と、花を愛でる町づくりに力を注ぎます。植物を育てる子どもの心を大事にしたいと、近隣の小学校に野菜苗を提供し、育て方を教えに行くことも。「子どもたちが期待を胸に苗を買いに来てくれる。うまく育つよう、丈夫な苗を渡してあげたい」と、未来を担う子どもの成長を見守ります。

田丸哲夫さん 都筑区池辺町

小学生の頃から父の野菜栽培を手伝い、「将来は農家を継ごう」と思いながらも、自分の道を開きたいと、花卉の道に。坪単価の高いパンジーを主力に始め、家庭菜園の需要を受けて野菜苗にも広げていきました。現在、作業は妻の真依子さんと二人で力を合わせています。花の見栄えやお客さんの反応など、妻からのアドバイスは、栽培に欠かせません。「一人より二人」と、息を合わせて取り組む夫婦の温もりが、苗にも伝わっているようでした。

吉原翔太さん 戸塚区東俣野町

吉原翔太さん 戸塚区東俣野町

藤沢市との市境に位置する戸塚区東俣野町。国道1号線から境川に向かった先には広大な農地があり、農業が盛んに営まれています。ここでイチゴ栽培を手掛ける吉原さんは、自身が経営する観光農園「吉原いちご園」を盛り上げようと、妻の信枝さんと共にさまざまな挑戦を続けています。

吉原翔太さん 戸塚区東俣野町

同園は、例年1~5月にイチゴ狩りを受け入れ、1シーズンで約1万3000人が訪れるほどの人気を集めています。しかし、「イチゴ栽培は、この時期以外の収入がゼロ。夏場の育苗期間中は経費がかかる一方で、何か収入につながるものがないか考えていた」と吉原さん。そこで、自分たちのイチゴを使ったメニューを提供するキッチンカーに目を付け、今年から営業をスタートしました。
看板商品は、冷凍保存したイチゴを、牛乳や練乳と合わせたドリンク「ストロベリーミルク」。レシピは、“イチゴ農家のまかないスイーツ”をテーマに、信枝さんが考案しました。この他に、ピンクと緑の2色でイチゴを表現した綿あめや、イチゴ狩りをしながら楽しめるクレープも販売しています。

吉原翔太さん 戸塚区東俣野町

キッチンカーは、車もメニューも「インスタ映え」を意識。真っ赤な車体とイチゴを模したサイドミラーが人目を引き、記念写真スポットとしても人気を集めています。

「自分は栽培のプロを目指し、妻には農園の雰囲気づくりを任せている」と吉原さん。皆が笑顔になれる農園にするため、若手農家ならではの柔軟な発想を生かし、改善を重ねています。来園客の喜ぶ顔や、「おいしい」という言葉を糧に、吉原さん夫妻はイチゴ栽培に力を注いでいます。

野﨑茂二さん 泉区下飯田町

野﨑茂二さん 泉区下飯田町

野﨑さんは栄区の農家の次男に生まれ、「農家に生まれたのなら働かざる者食うべからず」という父の教えから、幼少期は手伝いの毎日でした。結婚を機に妻が住む泉区へ。一度就職をして農業の道から離れましたが、現在は住宅地に囲まれた畑3カ所で、野菜の少量多品目栽培をしています。アルバイトで造園をしていた経験を生かし、傾斜地をブルドーザーで平地にするなど、働きやすい環境を自分で整備。「続けられているのは、環境の変化や仲間の存在があったから」と、父の教えや幼少期の経験を生かし、収益を向上させるために突き進んでいます。

野﨑茂二さん 泉区下飯田町

現在、小松菜やホウレンソウ、サトイモを主力に、年間20品目以上の野菜を1人で手掛けています。栽培ではたい肥にこだわり、妻の祖父の作り方を継承。わらやもみ殻は仲間に分けてもらい、米ぬかや裏山の落ち葉などを配合し、自宅敷地内に建てた、たい肥小屋に置いています。「市販のものを使ったこともあるけど、うちの畑にはこれが一番良い」と、笑顔を見せます。販売は10年前に、自ら販路を開拓したスーパーへの出荷と、自宅の無人直売のみにしました。1人での作業には限界があり、効率的にし、周年出荷し続けられるように心掛けています。

野﨑茂二さん 泉区下飯田町

JAの飯田支店元木支部には同世代のUターン就農した農家が多く、同じ境遇の仲間が。それが心の支えにもなり、畑で会えば情報交換をして技術を高め合うなど、結束を深めています。その中でも、同時期に就農した仲間が、きれいな野菜を作っているのを見ると、対抗心が沸くそう。JAの品評会が1年の評価基準。受賞経験はあるものの「仲間が受賞していると、来年こそはと思う。賞を取り続けられるようにしたい」と、挑戦を続けています。

田中稔成さん 戸塚区舞岡町

田中稔成さん 戸塚区舞岡町

戸塚区の舞岡農業専用地区は、横浜市営地下鉄「舞岡駅」の周辺に広がります。平成2年には同地区など102.6ヘクタールが舞岡ふるさと村に指定されました。水田が広がる谷戸、畑や樹林からなる原といった里山が残っています。土質は水はけのよい火山灰質で、トマト、サツマイモなどの栽培が盛んです。田中さんのハウスもこの一角にあり、自然豊かな環境で農作物を育てています。

田中稔成さん 戸塚区舞岡町

田中さんは、2棟1220平方メートルほどのハウスで、トマトを2200株ほど育てています。今までは2棟とも12月に定植を行い、3月から7月に収穫していましたが、今期は360平方メートルの小さい方のハウスでは、収穫期を真逆の11月中旬から4月にしようと、9月に650株を定植しました。このきっかけは、就農以来、一緒に農作業をしてきた父・康夫さんの高齢化。一人で農作業をすることとなり、体力的な負担を軽減するため、トマトの出荷時期を分散させました。

田中稔成さん 戸塚区舞岡町

栽培方法は土耕で、舞岡の火山灰質を利用しています。「水はけが良く、トマトの栽培に適している」と田中さん。摘果は実が大きくなるように1段あたり4個に絞ります。今期は13段まで収穫する予定。主な出荷先は「ハマッ子」直売所舞岡やと自宅の直売所です。田中さんのトマトの購入者はリピーターが多くいます。「自ら食べた食感では、甘みと酸味のコクのバランスが良い。これがお客さんの好みに合うのだと思う。トマトはコクを出すため、与える水の量を絞る。その一方で、実が小さくなるため、おいしく大きくなるよう、今後も工夫を重ねたい」と意欲を見せました。

矢澤秀之さん 泉区和泉町

矢澤秀之さん 泉区和泉町

泉区は、横浜市内最大の農地面積面積を誇り、農業の盛んな地域です。ここで果樹園を営む矢澤さんは、柿やリンゴ、梅などを栽培しています。「地元の人たちに、おいしい果物を食べてもらいたい」と、JA果樹部員の仲間と共に、横浜産果樹の知名度や品質の向上に尽力しています。

矢澤秀之さん 泉区和泉町

主力の品目は柿。60アールの畑で、6品種を栽培しています。特に、大玉品種の「太秋(たいしゅう)」の生産に力を入れています。「太秋は、柿の中でも最も手のかかり、プロとしての力量が問われますが、その分、やりがいがあります」と矢澤さん。実が大きく重いため、風の影響で落果しやすいといいます。これを防ぐために、枝を横に倒しながら樹高を低く保ちます。

手を掛けて育てた太秋。まだ一般に知られていない頃は、自宅直売所の利用者に「食べてみて」と配っていました。このおいしさは、口コミで広がり、収穫が近くとなると予約が続々と入るほど人気を集めています。

矢澤秀之さん 泉区和泉町

柿の他に、注目を浴びることが多いのがリンゴです。市内でリンゴの生産から販売までを行う農家は、矢澤さんを含む2戸だけ。横浜は、主要産地の東北地方に比べ、春の気温が高くリンゴの花が早く咲くため、8月のお盆過ぎ頃から出荷が始まります。「販売は全てJAの直売所。地元の消費者に、とれたてのものを届けたい」と、地産地消にこだわります。
今年は、大型台風の影響で収穫期間が短くなってしまいましたが、来シーズンに向け、剪定(せんてい)作業などの栽培管理に励んでいます。

中丸洋平さん 港北区新羽町

中丸洋平さん 港北区新羽町

港北区と都筑区にまたがる新羽大熊農業専用地区。その一角にあるハウスで中丸さんは水耕トマトを主力に、今年から他の農産物にも挑戦しています。父が亡くなるまで農業とは無縁でしたが、地元野菜部の仲間に助けられて今があります。日ごろから情報交換を欠かさず、農作物の品質向上に余念がありません。1人での作業にも限界があると考え「スマート化」をテーマに農業に取り組んでいます。

現在、中丸さんはトマトのハウス2棟7㌃を1人で管理。生育の良い冷蔵苗で、品種は大玉「桃太郎ファイト」2000株、中玉「フルティカ」200株、ミニトマト「千果」200株などを手掛けています。もう1棟では、今年からズッキーニやエダマメ、葉物野菜も作り始めました。主力のトマトは夏・冬の年2回転。産地入りのオリジナル袋に詰めて年間約12㌧をスーパーと市場などへ出荷しています。

中丸洋平さん 港北区新羽町

トマトは8月上旬に定植。肥料は父と同じように使っていましたが、経験を重ね独自の配分を生み出し、粉状の肥料を10㌧のタンクに入った水7㌧に溶かして栽培ベッドに送っています。溶液は、およそ1週間に1回のペースで5㌧を足しています。「根がダイレクトに栄養を吸収してくれるから、良いものが出来る」と水耕栽培のメリットを話します。収穫は11月上旬から始まり、12月に最盛期を迎えます。

中丸洋平さん 港北区新羽町

順調な一方でトマトの形が悪かったり、割れてしまったりと、B品が多く出来ることが悩み。解決されれば収益向上も見込めると、今年取り入れたのが、光合成を助けるCO2発生機。生育環境から改善することにしました。この機械では、スマートフォンなどで室内の状況をいつでも確認でき、集めたデータを翌年へと生かしていきます。〝品質向上はもちろんだが、ロスを無くす〟これが中丸さんの今の目標です。

相原重幸さん 泉区新橋町

相原重幸さん 泉区新橋町

泉区新橋町は谷戸のような地形で、強風の心配も少ない。もともと田んぼだった畑には水分が十分にあり、ナス栽培に適した土地だそうです。この地で相原さんはナスを主力に、ダイコンや長ネギなどを栽培しています。地元農家の結束は固く、かつて出荷先を失ったときは、力を合わせて共同販売を始めたこともあります。協力して作った資材は、今や欠かせないものに。

相原重幸さん 泉区新橋町

今年は「千両2号」の苗600本を注文し、4月中旬に定植。5月の連休明けに、鉄パイプを設置しました。株の6段目まではテープで固定し、風で実にすり傷ができないようにしています。株は「四本仕立て」で、株間を昨年より10センチ広げ、70センチにすることで病気の対策をしました。ダニやアザミウマなどの害虫発生にも毎日、細心の注意を払っています。夏場に大きく枝を切り詰める更新剪定はせず、追肥も2回で、霜が降りる11月まで収穫を続けます。

ナスは朝4時半ごろから、7時前までに収穫。台車に籠を前後2列に置き、手元にナス、前方は、切り戻した枝葉入れます。同時に行うことで、普段の作業を軽減します。ナスは収穫後、鮮度保持のため、すぐに袋詰めまで行います。形の同じ5本を選別し、見栄えも意識。滑りを良くするため、薄手の手袋で作業し、あっという間に終わらせます。

相原重幸さん 泉区新橋町

畑にいると近隣住民によく声をかけられるそうです。2㍍まで伸びる株を見て「普通のナスですか」と驚かれています。家庭菜園ブームもあり、栽培法も聞かれ、教えているそうです。相原さんは今の生育環境に満足せずに「品質にもこだわり、これからも、良いと思ったことは迷わず取り入れ、今年以上に、おいしいナスを作っていく」と力強く話した。この熱い気持ちと向上心が、明日へのやる気につながっています。

長谷川昌章さん、弘和さん 泉区中田北

長谷川昌章さん、弘和さん 泉区中田北

泉区は市内でも農地面積が最も多く、農業が盛んな地域。区の中央に位置する中田農業専用地区で、果樹園「誠長園」を営む長谷川昌章さん・弘和さん親子は、かながわブランドの「浜なし」の他、ブドウやカキ、イチジクを栽培しています。畑前の直売所で、8月から10月にかけて旬の果実を販売。連日、「誠長園」の味を求めて客でにぎわいます。

10年ほど前に植木生産業から移行して始めた果樹栽培。植木から果樹への転向は難しいといわれていますが、「木を育てる点では同じ」と、臆することなくチャレンジし、大きな病害にも遭わずにここまで来ました。

長谷川昌章さん、弘和さん 泉区中田北

同園では、ナシの栽培に神奈川県が特許技術を取得した「ジョイント仕立て法」を取り入れています。一本一本の樹を隣の樹に接ぎ木で連結させる方法で、市内でも取り入れている農家は数戸しかありません。苗づくりは大変ですが、樹が生長すれば、剪定作業など毎年の作業は格段に省力化されるといいます。

長谷川昌章さん、弘和さん 泉区中田北

ブドウ栽培でも、作業が省力化され作業効率の良い技術を取り入れています。人気の「シャインマスカット」や「藤稔」、「安芸クイーン」を育てています。
ここ数年は、昌章さんがブドウ、弘和さんがナシと、分業するように。互いの好みに合っていて、「自分のイメージした通りに房を作っていくのが楽しい」と昌章さん。弘和さんは「その年によって実の成り方が違って奥深い」と、それぞれの魅力を話します。

直売所では、家族総出で対応します。「誠長園」のフェイスブックやツイッターでも直売状況を発信しています。失敗して思うように収穫できなかった年の翌年に「やっと食べられる」と買いに来てくれたお客さんの笑顔に励まされたことも。毎年楽しみにしてくれるお客さんに喜ばれるよう、日々、果樹と向き合っています。

加藤克己さん 緑区新治町

加藤克己さん 緑区新治町

JR横浜線「中山駅」にほど近い緑区新治町は、里山風景が残る地域。この地で年間15品目の野菜を生産する加藤克己さんは、「自分の食べたい野菜」「間違いなく売れる野菜」を選び、13店舗あるJAの「ハマッ子」直売所のうち、中里店と四季菜館へ出荷。生産者数の少ない野菜を見極めています。

加藤克己さん 緑区新治町

夏の売れ筋はトウモロコシ。他の野菜より栽培面積を広く取り、6月中旬から8月中旬まで出荷しています。品種は「ゴールドラッシュ」で、毎朝5時に畑へ向かい、一度に約200本を収穫。出荷準備をし、9時頃には直売所に並べます。

「消費者の好みは、収穫したままの姿が良いという人と、自宅で処理しやすい方が良いという人に分かれます」。トウモロコシは皮つきと、一部の皮を取り除いて実が見える状態で袋詰めしたものの2種類を用意。陳列時は、人目に付きやすい位置に袋入りのものを並べています。

加藤克己さん 緑区新治町

「直売所に並ぶ荷を見ると、どれもきれい。自分も、それに近付けるようにしています」と加藤さん。どんなに味の良い野菜でも、荷姿が悪ければ、売れ行きは落ちてしまうといいます。「全ての品を完璧な荷姿にするのは難しいけど、自分の品を手に取ってもらうチャンスを広げていきます」。

毎週日曜日には、JAの新治支店で開かれる朝市にも参加し、地域の農業・農産物をPRしています。