▲ 図1 : カンキツの 生理落果▶ 図2 : カキの 早期落果痕 5月に花が咲いた後、小さな実が育っていく過程で、ポロポロと落ちているではないかと驚かれる方もおられると思います。 その落果は樹が自己判断で生理的に落とす現象であり、正常なものなので、ご安心ください。ただし、虫による落果の可能性もあり得ることは否定できませんので頭の片隅に。 多くの果樹は、花が咲いて結実した後に、果実が肥大して収穫に至りますが、結実した後に生理的に果実を落とす現象を「生理落果」といい、その多くは5月に花が咲いた後、6月に落果するため、ジューンドロップとも言われています。この生理落果が生じる果樹は、主にカンキツ、カキで、果実数の成り過ぎや充実不足な花による受精不良、着果後の発育不良などが原因となって生じます。曇雨天等の気象条件によっても大きく左右され、生理落果を完全に防ぐことはできません。しかし、なるべく生理落果させない方法としては、受精不良とならないような良好な花(花芽)の確保や養分の競合を起こさないような中庸な結果枝の確保に向けた栽培管理が対策となります。なお、開花時期にも花を落とす「生理落花」が起こるものもあります。 生理落果は前期落果と後期落果の2つに区別でき、前期落果は受精不良が原因であることが多く、後期落果は果実の発育不良や新梢伸長と果実肥大との間での養分競合などが主な原因とされています。 果実の摘果は、一般的に後期落果を終えてから、十分な着果量を確保した上で余分な果実を摘果します。樹にとって適正な果実数に管理することで、高品質な果実を生産するとともに、適切な樹への着果負荷が翌年の樹勢のコントロールにもつながります。後期落果は収穫前落果とも呼ばれ、果実が成熟する間近に落果してしまうこともあります。この収穫前落果の防止方法としては、植物成長調整剤の使用が有効で、果軸の離層分離を抑制することが可能です。 カンキツは前期落果の中でも、5、6月の1次落果、7月の2次落果(図1)の2段階あります。この2段階目が終わってから、品種によって摘果作業を行います。 カキは品種にもよりますが、受精不良や樹体の栄養条件で7月頃に幼果が落ちます(図2)。不要な花を咲かせないよう蕾の段階で取り除く摘蕾作業を行うと、少しでも養分競合を生じさせず、残された花(果実)の果実肥大を促せます。 生理落果を完全になくすことは生理的に不可能ですが、果樹は永年作物なので、樹体への養分貯蔵、貯蔵養分の有効利用、新梢・果実の成長バランスなど年間を通じた栽培管理が果実生産における重要なポイントとなります。今年だけでなく、来年以降に向けて、できることから始めてみましょう。(担当 笹田)8神奈川県農業技術センター横浜川崎地区事務所TEL.045-934-2374果実が6~7月に落ちてしまうのは、 主に『生理落果』
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