ひよくリー畑。水分を含んでしっとりとした黒土を踏みしめながら、渡邊さんは一株ごとに生育状態を確かめていた。今年は秋口の猛暑の影響で定植が1カ月近くずれ込んだものの、その後の生育は順調だ。葉を裏返し、「よし、ソルゴーが効いているな」。病気の発生もない。いで、緑肥の活用に注力。ブロッコリーやキャベツの畑では、定植の3カ月前からソルゴーを植え、生長したら畑にすき込み、石灰窒素を加える。すき込み作業は4、5回繰り返し、栽培に適した土に仕上げていく。ソルゴーは深く根を張るため土壌の通気性や水はけが改善する上、すき込まれた茎や葉によって肥沃度も高「野菜作りは土作りから」との思まるなど、活用のメリットは多い。「ソルゴーには雑草や病害虫の発生を予防する効果があるので、減農薬にもつながる。土壌の改善には土の表層と下層を入れ替える天地返しをするのがベストだが、そこまで大掛かりなことはできない。緑肥でも十分な改善効果を感じている」手をかけ、時間をかけて作り上げた畑。そんな豊かな大地から作物の芽が一斉に噴き出す瞬間、渡邊さんの心は強く躍る。野菜の生命力と、それを支える土の力にわくわくした期待が膨らむという。渡邊さんは、長く勤めた建設会社を61歳で定年退職し、就農した。父はその10年ほど前に他界し、先祖伝来の畑は母一人で守っていた。所有する120㌃の農地は父の死後、一緑肥生かして土作り長年の蓄積データを糧にた、緩やかに傾斜する畑で、渡邊敏彦さんは市場出荷に向けて年間15品目の露地野菜を生産する。土作りに注力した丁寧な栽培はおのずと良品を生む。培った技量への評価は高く、きた地区JAまつり農産物品評会では、最高位に与えられる「神奈川県知事賞」を受賞するなど、上位入賞の常連だ。起伏に富んだ地形の保土ケ谷区上菅田町。住宅地や雑木林に囲まれ10月下旬の雨上がりのブロッコ保土ケ谷区上菅田町渡邊 敏彦さん(71)濱農浪漫定年を機に家業に土にこだわり良品栽培
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