野菜・米から梨栽培へ味への信頼が営農の肝は、祖父母や両親と共に野菜や米を生産していた。農地の周辺は徐々に宅地化が進み、営農環境は変化しつつあった。その影響が大きく表れたのが水田。「田んぼの水は川から引いていたが、上流に住宅が増えたことで家庭の雑排水が混ざるようになり、臭いもきつかった」といい、水田の維持について悩む日々が続いた。開通に向けた工事を進めていた。「ちょうどその頃、市がトンネル掘削の際に出た残土の処理に困っていると聞き、周辺農家と共にこの残土を使って田んぼを畑に転換することにした」。和夫さんは腰を痛め、体への負担が大きい野菜の栽培に辛さを感じていた。そこで、転換した畑では立ったまま作業ができる果樹栽培に大学卒業後に就農した和夫さんそんな中、横浜市が市営地下鉄の着目。近隣農家10軒ほどで梨の栽培を始めた。一方、当時の汲沢地区は梨農家がおらず、近隣で栽培知識を学ぶ機会が無かったため、旧横浜南農協果樹部が主催する講習会に参加。和夫さんは「梨の栽培について、『何が分からないのか』すら答えられない状態。講習会は最大の学びの場だった」と振り返る。講習会以外にも、区内や隣接する泉区の先輩果樹農家に教えを請い、知識や技術を身に付けていった。導入品種についても、先輩農家の持つ情報やアドバイスを参考に、和梨の定番「幸水」「豊水」に加え、「新水」「菊水」「新星」の5つに決め、苗木の育成から始めた。「長く農業を続けていくためには、味への信頼が大事」と話す和夫さん。当時は自宅直売をメインに、父がイチゴを手掛ける。自宅直売をメインにした地元密着の営農スタイルで地域住民から高い人気を得ている。園主の石井和夫さんと、長男の保雄さん、次男の直樹さんの親子2代で、環境変化に対応しながら各々の「やりたい農業」を実現し、地域農業の活性化に力を注ぐ。戸塚警察署から車で5分ほどの場所にある「丸伝農園」は、梨・ブドウ・戸塚区汲沢石井 和夫さん(73)濱農浪漫親子2代で果樹栽培時代と共に変化する営農
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