なる水田では、薄緑色に実った稲穂が頭を垂れ始めています。「よく伸びてきたな、今年の生育もまずまずだ」。田を管理する小菅正彦さん(泉区下飯田町)は目を細めます。この夏は厳しい猛暑と少雨に見舞われましたが、穂の伸びも揃い、例年並みの収量が期待できそうです。 小菅さんは、この一帯で「はるみ」を中心に「てんこもり」やモチ米を作付けています。米作りに携わって40年近く。周囲では、担い手の高齢化などを理由に水田耕作から手を引いてしまう農家が相次ぐ中、現在はこうした田も借り入れて作付けています。耕作する1・25㌶のうち、50㌃余りが借入農地です。「米作りをやめ、田が枯れてしまうと、水が回らなくなるなど、いずれ我が家の田んぼも影響を受けてしまう。自分ができることで何とか維持していかないと。先祖から受け継いだ大切な田んぼですから」と話します。 8月下旬、境川のほとりに連 「はるみ」は、JA全農かながわがキヌヒカリとコシヒカリの交配により開発した、神奈川生まれの品種です。名前の由来は「湘南の晴れた海」。つやがあり甘みの強いのが特徴で、冷めても硬くなりにくいといいます。日本穀物検定協会が実施した平成28年産米の「米の食味ランキング」では、県産米として初めて最高評価となる「特A」を獲得。さらに翌年産米も「特A」に。おいしい米として一躍全国から注目を集めました。 JAは令和5年度、「はるみ」の食味向上や環境に配慮した米づくりを目指し、肥料試験に取り組んでいます。 試験は山田良雄営農技術顧問を中心に、営農インストラクターや肥料メーカーが連携。試験田を分け、例年同様の施肥、 「はるみ」は現在、神奈川県の奨励品種として普及し、横浜市内でも多くの米農家が手掛けています。JAとしても1、2等級の「はるみ」の買取価格を引き上げるなど集荷・販売に力を入れています。 小菅さんは「米作りは、水の確保や畔の修理といった大掛かりな作業もあり、一人の力では及ばないことが多い。周囲の農家との協力やJAなどの支援があったからこそ続けてこられたと思います。最近の「はるみ」人気は大きな励み。追い風にしてこれからもおいしい米づくりに挑戦したい」と意気込んでいます。肥料の価格高騰対策や環境保全を視野に堆肥を配合しての施肥、作業の省力化が見込まれる緩効性の肥料と食味向上の効果のある肥料の組み合わせによる施肥を行い、効果を検証します。 JAは、これら一連の試験結果を踏まえ、推奨栽培基準を設定して「はるみ」の品質向上を目指す考えです。猛暑の中、順調に生育神奈川生まれの「はるみ」品質向上に向けて試験先祖が残した田を守りつつ誇りをもって横浜で米を作る施肥試験の水田では9月1日、熟期の効果測定を実施。山田顧問は「いずれの試験田でも施肥効果が順調に表れている。今後、食味の向上につながることを期待したい」と話す猛暑の中、順調に育った稲穂を手にする生産者の小菅さん
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