Agri横浜 vol.223
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会社勤めを経て28歳で就農した矢島さん。父が体調を崩したことがきっかけだった。一方で、農作業を手伝っていたのは小学生の頃まで。「農業の知識は、ほぼゼロ。全て独学でやり始めた」と、振り返る。矢島家では元々、米が主力だったが、当時の減反政策で作付け面積の削減を余儀なくされた。これを受けて、父が野菜も手掛けるようになった。矢島さんが就農してからはトマトの施設栽培に着手するなど、規模を拡大。現在は90㌃で年間約80品目を生産している。「当初は、畑に肥料をまいて苗を植えるだけで良いと思っていた―」。トマトの栽培を始めて2年目、葉の変色や枯れの症状が出てしまった。独学で始めたが故に、病害虫や生理障害についての知識が不足していたため、JAなどに相談。褐色根腐病だと判明し、土壌消毒を勧められた。この頃に出合ったのが、「漢方農法」だ。漢方農法で使う肥料や薬剤は、人間が服用するものと同じ生薬や、漢方の煎じカスなどから作られるもので、人体への害がない。当時、子どもを畑に連れて行くことも多かった矢島さん。「『今日は農薬をまくから駄目』とは言いたくない」という思いもあり、導入を決めた。まず、土壌改良材で微生物がバランスよく増殖できる土壌を作った。農薬や化学肥料のような即効性がなく、改善されるまで約3年を要したが、以来、土壌消毒をしなくても生理障害は出ていない。「健康な土で健康な野菜を作れば、薬はいらない。人間と一緒だよ」と話す。害虫対策では、虫を「退治」するのではなく、虫が嫌がる成分の入った回避剤で作物に「寄せ付けない」ようにする。完全には駆除できない独学で始めた農業矢島久道さん(59) 栄区田谷町漢方の力で土壌改善漢方の煎じカスなどが配合された土壌改良材を活用 栄区田谷町で建設が進む、横浜環状南線と横浜湘南道路の「栄IC・JCT」。その眼下に広がる水田地帯の一角で野菜を栽培する矢島さんは、20年以上前から漢方農法に取り組む。時間をかけて作り上げた土壌で作る減農薬野菜は、健康志向の消費者から人気を集めている。漢方農法で健康な土作り減農薬野菜が直売で好評

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