Agri横浜 vol.222
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はま   かき技術顧問北尾 一郎「柿が赤くなると医者が青くなる」ということわざがありますが、これは柿が赤くなる秋は気候が良いので体調を崩す人が少なくなることや、柿にはビタミンCなど健康に役立つ成分が豊富なことからくるようです。一昨年、JA横浜果樹部の皆さんが栽培した高品質な柿「浜柿」が「浜なし」「浜ぶどう」と同様に「かながわブランド」に登録され、横浜を代表する果実になりました。今回は、もうすぐ赤く色付く「浜柿」のお話をしましょう。1.「浜柿」を代表する品種とは土や緑とふれあう暮らしの食感とは異なり、サクサク感があり、ジューシーで爽やかな甘みが特徴です。柿離れが顕著だった若者にも人気があり、「柿は嫌いだが『太秋』なら食べる」という話も聞かれるほどです。一方、年配の皆さんからは昔から慣れ親しんできた柿らしさがないと言われる場合もあります。話は少しそれますが、柿は人によって好みが大きく異なり、硬めのしっかりした果実を好む方と、軟らかく少しジュクジュクした果肉を好まれる方に分かれるようです。あなたはどちらですか?収穫販売は10月中旬頃から始まり、初めのうちはヘタの周囲が青い果実が店舗に並ぶことがありますが、果頂部とヘタ周辺の糖度や食味の差が大きいので、果実全体がしっかりと着色したものがお薦めです。Brix糖度は16~18度です。全国的にも知られるようになった「太秋」ですが、栽培には難しさがあり、特徴である果実の条紋(果頂部に同心円状に黒く模様が出る)がひどくなると果実が軟化したり、樹が大きくなってくると雌花が少なくなったり、収穫前の落果が多くなるなど、気難しい面が出てきます。現在、果樹部の皆さんもいろいろと検討しているところです。(2)早秋(そうしゅう)国の果樹試験場が1988年に「伊豆」と「109-27」を交配・育成し、平成15年(2005)に品種登録された極早生品種です。収穫販売は9月下旬からと非常に早く、その年のシーズンのトップランナーです。最近は、その頃はまだ残暑が厳しく、柿を食べる気がしないかもしれません…。果実は250g前後、形はやや扁平です。写真のように非常に紅が濃く、トマトのような美しい色をしています。Brix糖度は15度前後とやや淡泊ですが、果汁が多く極早生としてはおいしい柿です。同じ時期には果肉が粗い「西村早生(にしむらわせ)」がありましたが、それに代わるような品種です。生理落果が多いので、しっかりと受粉して種子ができるような栽培管理が求められます。果樹部の柿の栽培面積は14ヘクタールほどで、従来から「次郎」や早生種の「前川次郎」、そして「富有」などが栽培されてきました。これらの柿は「浜柿」の代表といえます。まずはこれらの品種にまつわるお話です。(1)次郎(じろう)起源は、江戸時代の弘化年間(1844~1848)に静岡県周智郡森町の松本次郎吉が町内の太田川の河原にあった柿の幼木を持ち帰って自宅に植えたことに始まるといわれています。発見者の名前から名付けられた品種です。果実は250~300g程度で、果肉はやや硬めですがBrix糖度は16~17度になります。少し前まで、収穫販売は10月下旬から始まりましたが、近年は秋の気温が高く、着色が遅れる傾向があり11月に入ってからになっています。このため、「次郎」より早生の「前川次郎」も増えてきました。果形は写真のように整っていて、紅が濃く外観のきれいな果実です。収穫販売は11月中旬頃からで、1果重は250~300gでBrix糖度は15~16度と中程度です。種子が入らないと生育途中で落果しやすいので、「禅寺丸」「サエフジ」などの受粉樹が必要です。2.「浜柿」に加わった個性的な品種とは「次郎」「富有」に加えて、近年は多くの個性的な新品種が栽培されるようになりました。次はそれらの紹介をしましょう。(1)太秋(たいしゅう)1977年に当時の農水省果樹試験場が「富有」と「ⅡiG-16」を交配・育成し、平成7年(1995)に品種登録した大玉柿品種で、横浜では400~500gと圧倒的なボリューム感のある果実で販売されています。従来の柿(2)富有(ふゆう)全国で最も多く生産されている完全甘柿です。起源は江戸時代の安政4年(1857)に岐阜県本巣郡巣南町の小倉初衛の宅地内に始まります。「富有」の名は中国の古典「礼記」の中の「富有四海之内」に由来するようです。かながわブランド「浜柿」のお話緑の情報箱

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