Agri横浜 vol.210
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技術顧問福井 英治生産圃場での鉢栽培土や緑とふれあう暮らしコアラとユーカリユーカリはコアラの主食としておなじみですが、コアラが食べるユーカリは20種にも満たないほどで、先端の若く柔らかい葉だけを好んで食べます。ユーカリの葉には精油成分があるためコアラ以外の動物は食べません。世界最大級の高木になる樹種であり、南半球では高さ100m近くまで育って巨木林を作るようです。根を非常に深くまで伸ばし地下水を吸い上げる力が強いので、生長がとても早く砂漠化した地域の緑化に使われています。日本へ渡来したのは明治初期で、関東地方南部以西に植栽されました。最初は建築用に使われましたが、白い幹や遠くからでも目を引く青白い葉に観賞価値があり、枝葉がよく茂り木陰を作りやすい木として、記念樹や街路樹に用いられるようになりました。日本では高さ30m程度にとどまっています。その特性から、ランドマーク的に植栽されることが多いようです。葉には樟脳に似た香りがあり、ここから抽出・精製されるオイルがアロマテラピーの原料や医療薬、リキュールやせっけんの香料などに使われます。日本でも観賞用として栽培・出荷する農家が増えています。ユーカリという植物をご存知ですか。この植物が注目されたのは、1984年にコアラが日本に初めて来たときと、昨年から今年にかけてオーストラリアで発生した森林火災のときではないでしょうか。このユーカリがドライフラワー、アレンジメント、観葉植物などとして人気です。ユーカリという植物ユーカリはフトモモ科ユーカリノキ属の植物で、世界の熱帯・亜熱帯に約600種、ほとんどがオーストラリアからニュージーランドに分布しています。フトモモ科の植物は、国内では小笠原諸島にあるくらいで、あまりなじみがないかもしれません。オーストラリアとユーカリオーストラリアは乾燥気候に加えて雨がほとんど降らず、干ばつになることがしばしば。最近では地球温暖化の影響もあり、気温が上昇しているそうです。気温が高く水分がないため、火災が発生するとたちまち火が回ります。オーストラリアでは自然発火による山火事が多いのですが、ユーカリがその一因とされています。ユーカリの葉は植物精油を放出し、気温が高いとその量が多くなるので夏季にはユーカリ林の精油濃度はかなり上昇します。引火性であるため何かの原因で発火した場合、燃え広がり山火事になります。多く流通している品種代表的な品種として、葉からレモンの香りがする「レモンユーカリ」、卵型の葉をした「グニーユーカリ」、ハートの形をしている「ポポラス」など、写真のようにさまざまな葉の形があります。ところで、コアラの睡眠時間は16時間以上もあるのをご存知でしたか? この長時間睡眠の秘密はユーカリの葉の成分にあります。コアラの餌であるユーカリを体内で解毒するには多くのエネルギーが必要となるため、食事以外は動かずに長時間寝る必要があるのだそうです。動物園に行っても、いつもユーカリの木にしがみついてじっとしているだけでほとんど動かなかったり、眠っているコアラしか見たことがない方も多いかと思います。樹皮は非常に燃えやすく、火がつくと幹から剥がれ落ちるので幹の内側は燃えずに守られます。根に栄養を蓄えているため、火事の後も新しい芽を付けて生長し続けることができます。また、落雷も出火原因として考えられます。ユーカリの葉は燃えやすいのです。緑の情報箱ユーカリの魅力

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