アボカドは「森のバター」とも呼ばれ、ビタミン、ミネラルが豊富で脂肪分が20%近くあります。この脂肪分は、不飽和脂肪酸が主体のため健康に良いといわれています。現在、国内で売られているアボカドのほとんどがメキシコ産で、以下ペルー、オーストラリア、ニュージーランドと続きます。一般的に輸入アボカドの多くは、日持ちを考えて熟す少し前に早どりします。もし自分のアボカドを持っていれば、樹上完熟させてから収穫するので、同じ品種でも輸入果実とは全く違うおいしさが楽しめます。横浜市内でも、ごくわずかに栽培に取り組んでいる方はいますが、熱帯果実のため露地栽培は非常に難しいです。ポット植えのハウス栽培でうまくいっている事例はありますが、今回は露地栽培にチャレンジする場合のポイントをご紹介しましょう。技術顧問 北尾 一郎(写真1)横浜産ベーコン果実(写真2)ベーコン断面*耐寒性0℃の品種は露地栽培不可能のため省略します。*品種名に続くⒶⒷは開花型です。*ハウス栽培の場合は、栽培可能な品種の幅が広がります。アボカドの耐寒温度は品種によって0〜−6℃と異なります。露地栽培における品種選びの最大のポイントは「耐寒性」です。品種ごとの耐寒性の目安は表のとおりです。 アボカドは一つの花の中に雌しべと雄しべがありますが、その成熟がずれるという不思議な特徴があります。 午前中に開花して、まず雌しべ(♀)が受精態勢に入り、午後にはいったん花弁を閉じて翌日の午後に再び開花して今度は雄しべ(♂)から花粉が放出される「Ⓐタイプ」と、それとは異なる「Ⓑタイプ」があります(下表)。結実を良くするには、2つのタイプを混植する必要があります。 耐寒性や開花型を考慮すると、横浜で栽培にチャレンジする場合はⒶタイプの「メキシコーラ」「メキシコーラグランデ」、Ⓑタイプの「ベーコン」「フェルテ」の4品種から選んで混植すると良いでしょう(ⒶタイプとⒷタイプは必ず混植すること)。 これらの品種は4〜5月に開花・結実し、10〜12月に収20〜25℃の室温で7〜10日追熟させると、軟化して食べ頃になります。(4) 主要品種の特徴①ベーコン メキシコ系とグアテマラ系の交雑種で、カリフォルニアで育成されました。樹は直立性で勢いがあり、育てやすいです。果実は卵型で重さは300g前後、果皮は薄く、濃い緑色です。 収穫期は11〜12月。果肉は淡黄緑色、滑らかで甘みを感じます(筆者は横浜産を食しましたが、非常においしい)。果実中の果肉割合は約60%です。(写真1、2)②フェルテ メキシコ系とグアテマラ系の交雑種で、カリフォルニアで命名されました。フェルテはスペイン語で「強い」「丈夫」を意味します。樹は開帳性(開く樹形)で、低樹高栽培に向いています。 果実重は300〜400g、果皮は薄く成熟しても緑色で、収穫期は12〜3月。果肉は滑らかで、果肉割合は75〜77%、油分が多くナッツのような後味がある濃厚な食味が特徴です。③メキシコーラ アボカドの中で最も耐寒性の強い品種の一つです。果実重は100g前後で、果皮は光沢のある黒色、収穫期は10月。果肉にはアニス(爽やかな甘い香りの香辛料)の香りがあります。上記の「ベーコン」「フェルテ」の受粉樹として利用できます(なお、「メキシコーラグランデ」は「メキシコーラ」より大玉の品種です)。 栽培条件は、人が手を入れることである程度改善でき2.植える場所(露地)選びなどのポイント(1) 候補地の事前調査(2) 開花型:受粉・結実させるポイント(3) 横浜での品種選択穫・追熟します。アボカドは追熟が必要な果実で、収穫後1.品種選びのポイント(1) 耐寒性:冬の寒さに耐えられるか土や緑とふれあう暮らし耐寒性(目安) 品 種メキシコーラⒶ、メキシコーラグランデⒶ−6℃までベーコンⒷ、フェルテⒷ、エッティンガーⒷ−4℃まで−2℃までハスⒶ、ピンカートンⒶ1回目午前・午後開花型Ⓐタイプ♀ ―Ⓑタイプ― ♀2回目午前・午後 品 種メキシコーラ、ハス、ピンカートン― ♂♂ ―ベーコン、フェルテ、エッティンガー「アボカド」にチャレンジ緑の情報箱
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