JA横浜 vol.233
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土や緑とふれあう暮らし緑の情報箱もう きん技術顧問 川西 隆智都会に多いハシブトガラスは、どのくらいの距離を移動すると思いますか。東京都目黒区の公園をねぐらにしているカラスにタグを付け移動距離を測ったところ、ハシブトガラスの幼鳥では、ほとんどのねぐらから10㎞以内で観察されています。一番遠くで観察されたもので41㎞という記録が残されています。上野公園内で観察されたハシブトガラスの行動もほとんどが公園内周辺にいて、遠くても10㎞程度にとどまっています。これらは縄張りを持たない幼鳥の行動です。色素メラニンが羽にあることで強度を増しています。生理学からいうと、黒い色で体熱の効果的コントロールをしている可能性があります。行動学的には黒い目立つ色をしていることで、集合する信号になっているかもしれません。成鳥は幼鳥よりも色が濃く、社会的地位を表しているのかもしれません。カラスの仲間の多くは全身が黒い、あるいは黒い羽毛に覆われているように見えますが、飛んでいる姿を下から太陽の光を透かしてよく見ると濃い茶色に見えます。色素の多くは茶色のメラニンです。また、カラスの濡れ羽色といわれるように、光に当たると緑色、濃紺、紫色など反射した光がいろいろな形に見えます。鳥類の多くは主に鳴き声と視覚的ディスプレーによりコミュニケーションを取ります。カラスがよく鳴くのはそのためです。ハシブトガラスでは集合、相手の確認、自己主張、警戒などさまざまな場面で鳴き声を発します。カラスが小鳥類と違うのは人が快いと思う音域より声が低いこと、声量が大きいこと、鳴き方が音楽的ではないことです。また、カラスは雄雌の結び付きが比較的強い種類です。そのため鳴き声の意味の多くは相手の存在を確かめている声や、自分の存在を誇示するためのもので、離れて止まっていてもお互いの存在を確認し合っています。5〜6月の巣立ちの時は、子カラスが親カラスを呼びにぎやかになります。ハシブトガラスは日本にいる鳥の中では中型から大型の鳥です。この大きさの成鳥をとらえるのは、オオタカやワシなどの大型の猛禽類くらいしかいません。カラスはどれだけ移動できるかカラスはなぜ黒いのかカラスはなぜうるさく鳴くのかカラスに天敵はいるか都会では街を汚すカラス対策にたくさんのお金と時間をかけています。しかし都会のカラスはなぜ増えるのでしょう。地域住民は、普段からゴミ出しに気を付け、カラスとゴミの接触に大変神経を使っています。コンクリートに囲まれ、その中に居を設けた生活を過ごしているカラス群ですが、ここ数年、カラスの増加に伴う被害や苦情が増えています。カラスのはなし

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