Agri横浜 vol.219
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●57%が「労働力確保で営業等の時間が増加」●78%が5年前と比較して年間売上が増加金子さんが目指す農業経営とは?曲折の末に到達した農福連携父親とは違う農業にチャレンジしたいと、16年に温室を建てイチゴ栽培を始めました。業参入に関わり、同社と農業生産法人を設立。その後、このプロジェクトに専念するため、県いちご連主催の品評会で上位入賞するほど順調だったイチゴ栽 金子さんは平成14年に家業の農業に従事。培から、完全に手を引きました。しかし、黒字化を焦る企業側スタッフが迷走し始め、非効率な営農が悪循環を生むようになり、28年に退職。その1年後に同法人は撤退しています。その頃、知的障がい者でも農作業ができることを知り、農福連携に興味が湧きました。同愛会の非常勤スタッフとして働き始め、障がい者への栽培指導の体験が営農再開の引き金となりました。型*1の認可を目指します。今年現場にいなくても、スマートフォンで操作できる自動かん水システムと出合ったことも好機でした。イチゴ栽培では高品質を目指すあまり、作業の負荷が大きく、家族との時間が持てなかったからです。金子さんが営農から離れている間、父親が温室で軟弱野菜を栽培していましたが、手一杯の状態に。温室を返したいという話になりました。そこで温室の活用を前提に、皮が厚くて傷みにくく、障がい者でも扱いやすいミニトマトを選択。また、個人での営農に限界を感じ、多くの仲間を作って事業拡大を目指せる法人での農業経営を決めました。温室が返され、準備期間もないまま始めたため、法的な要件を満たす事業所ではありませんが、将来的には就労継続支援Bは温室を拡張し、受け入れ範囲を拡大する予定。温室ごとに品種と作型を変え、端境期ができないように環境を整えます。キャリアコンサルタントの資格を持つ金子さんは、パート従業員の能力開発にも力を入れます。学習を雇用の条件とし、月2回の「朝活」を実施。農業と福祉をテーマに、オンラインで講義します。金子さんが目指すのは、ソーシャルファーム*2。障がい者の活躍をサポートするだけではなく、学生や主婦が経歴を積み上げられるような職場です。「農家」ではなく、「農業経営者」の育成をモットーに、農福連携とAIで、農業に改新をもたらそうとする今後の活動から目が離せません。❶❷❹❸農林水産省ホームページより*1:通常の事業所に雇用されることが困難で、雇用契約に基づく就労が困難な者に対して、就労の機会の提供など必要な支援を行う事業*2:自律的な経済活動を行いながら、障がい者などの就労に困難を抱える方が必要なサポートを受け、他の従業員と共に働いている社会的企業※農林水産省調査(平成31年3月)による実際に農福連携に取り組んだ効果を実感農業経営体への効果農福連携に取り組む農業経営体の、●76%が「障がい者を受け入れて貴重な人材となった」と認識と認識障がい者にとっての影響農福連携に取り組む障がい者就労施設の、●79%が「利用者が体力がついて長い時間働けるようになった」、62%が「利用者の表情が明るくなった」と回答●74%が過去5年間の賃金・工賃が増加❶日射センサーと土壌センサーからの情報を元に、AIが最適なかん水と施肥を実行する ❷自動かん水システムは、スマートフォンから手動操作も可能❸出荷先に合わせた荷姿 ❹高校生を対象にしたプロジェクトに協力。ソーラー発電による温室の暖房装置を工業高校の生徒が製作した 農業現場では、さまざまな作業がありますが、障がい者が取り組みやすいように工夫することで、働き手としての可能性が拡大します。生産工程や作業体系等の見直しを行い、生産拡大など農業経営の発展につながっている優良事例も見られます。障がい者視点で農作業の体制を整備(農業経営体における障がい者雇用事例)障がい者雇用数に比例し売上が6倍に農業分野での障がい者活躍への期待21年から大手外食企業の農

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