Agri横浜 vol.207
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技術顧問 北尾 一郎「浜なし」はナシの品種の名前でしょうか? 違います。「浜なし」はJA横浜果樹部に所属し、各種講習会に参加したり、生産履歴記帳をしっかり行った生産者のナシで、平成27年6月19日に商標登録されました。「浜なし」は品種名ではなく、「幸水」「豊水」「あきづき」など、横浜市内で生産されたナシの総称です。今回は、ナシの品種名の由来についてお話ししましょう。なお、このような話には諸説あるようですので、あらかじめご承知ください。たい はくいま むら あきわ  せ こう  ぞうあま   がわ1 神奈川県で作られた主な品種土や緑とふれあう暮らし「浜なし®」ってなに?ナシの品種名のお話し2 国で作られた主な品種て君臨しています。果肉はややざらつきますが、甘みがあり大玉が特徴のナシです。母親「天の川」と父親「今村秋」を交配して作った品種で、「天の川」が新潟県の品種、「今村秋」が高知県の品種であったので、作出当初、県名の一文字ずつをもらって「新高」と名付けたようです。最近の遺伝子解析により、父親が「今村秋」ではなく、神奈川生まれの「長十郎」であることが分かりましたが、名前はそのままです。9月下旬〜10月上旬に出回ります。ナシの育種は国が中心に進められてきたこともあり、多くの品種が国の試験場で作られました。幸水(こうすい)誰もがご存知の「幸水」は「浜なし」の代表品種ですが、その歴史は案外古く、昭和34年に品種登録され60年以上経過していますが、現在、日本中で最も多く栽培されている品種です。発表当初は味は素晴らしいものの果重が200〜250g程度と小玉で、評価されませんでした。その後、先人たちの努力で栽培技術が向上し、300〜400gの大玉生産ができるようになりました。母親「菊水」と父親「早生幸蔵」を交配して作った品種なので、両親から一文字ずつもらって名付けました。糖度が高く(13度前後)、きめ細かく柔らかい肉質が好まれています。8月中旬のお盆前後に出回ります。豊水(ほうすい)昭和47年に品種登録された「浜なし」の代表品種です。この品種には、さまざまな物語があります。まず来歴ですが、そもそも両親がはっきりしま神奈川県は実は果樹品種をたくさん作出した品種大国だということをご存知でしょうか。神奈川県の試験場では全国に先駆け、大正4年にナシの育種のための交配を始め、昭和2年に「菊水」「新高」「八雲」など30数品種が命名発表されました。近年でも「長寿」「あけみず」「香麗」などの新品種が作られています。それでは、まず皆さんになじみがあるナシの品種について、その名前の由来などをご紹介しましょう。長十郎(ちょうじゅうろう)お隣の川崎市の大師河原(現在の川崎大師付近)で明治26年ごろ、当麻辰次郎さんのナシ園で偶然見つかったナシです。当麻さんの屋号(長十郎)から名前をとって命名した赤ナシ品種で、「二十世紀」と共に一時代を築きました。甘みはありますが、ガリガリした歯触りがあり、現在はほとんど見られなくなりました。8月下旬〜9月上旬に出回りました。菊水(きくすい)昭和2年に命名された青ナシ品種で、母親「太白」と父親「二十世紀」を交配しました。この時代に多くの品種を意欲的に作出した果樹業界の巨星、菊池秋雄先生の一文字をもらって名付けられたようです。「二十世紀」の大敵、黒斑病に強く糖度が高いのが特徴で、その後のおいしいナシの親として活躍しました。横浜でも、まだごく一部で栽培が続いています。「菊水」の根強いファンもいるようです。9月上中旬に出回ります。新高(にいたか)「菊水」と同じく昭和2年に命名された古い品種ですが、国内では依然として晩生ナシの代表品種とし

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