おうと技術顧問 山田 良雄赤かび病被害小麦粒昨年、農業関係者では大きな問題となった、学校給食での集団食中毒事故がありました。原因は、せんべいの原材料である小麦のかび毒でした。幸い深刻な健康被害は免れたようですが、生産者はもとより、農業関係者に大きな波紋を投じられた事故でした。今回は取り上げにくい話題ですが、安全な農産物を生産されている生産者のご努力を少しでもご理解いただければと思い、あえて取り上げてみました。率直なご意見等をいただければ幸いです。小麦の主要な病気である「赤かび病」の病原菌(フザリウム)が作るかび毒です。かび毒にはいろいろな種類がありますが、国内ではデオキシニバレノール(DON)とニバレノール(NIV)の2種類があります。昨年は、DONによる事故でした。小麦のかび毒は、耐熱性が高く化学的にも安定な物質のため除去や分解をすることが困難で、今回のように加工された食品から被害が出ています。人や家畜に対して、食欲減退等の軽い症状から、下痢・嘔吐や免疫機能抑制、さらには発がん性があるとの報告もあります。従って、小麦の生産や出荷に対して厳しい基準が設定されています。生産段階では、農薬による予防的防除、適切な乾燥調製や多岐にわたる栽培管理基準に沿って栽培することで、完全ではありませんが相当程度防ぐことができます。小麦は専門機関による検査を受けなければ市場流通できません。検査を受けた時に、生産者ごとに専門分析機関で「かび毒」の検査をすることになっています。従っ出回ることや家畜の□になることもなく、全て廃棄処分されることになっています。今回の事故は、いろいろな段階での手違いやミスが重なって、不幸にも起こってしまったようです。ている糸状菌(かび)です。胞子を作って、風を使って伝染します。 小麦が4月中旬ごろに穂を出して開花する時に感染します。この時期、比較的気温が高く(おおむね22〜23℃)、降雨等で湿った環境条件で多発生する傾向があります。発病すると穂を枯らして紅〜桃色のかび(胞子)を形成し、かび毒を作ります。<小麦の赤かび病>赤かび病とは 病原菌の「フザリウム」は自然界のどこにでも生息して、人的な間違いがなければ、流通されている小麦は安全です。出荷検査でかび毒が検出されたものは、市場に小麦のかび毒とはかび毒を作らせない・流通させない仕組み土や緑とふれあう暮らし正常な小麦粒緑の情報箱小麦のかび毒と生産者の苦悩
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