JA横浜_Agri横浜VOL.253
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トウガラシシシトウ胎座種子隔壁交雑となりに植えても大丈夫。技術顧問 山田 良雄辛いよ。おいしいよ。辛み有り小果種トウガラシ土や緑とふれあう暮らし緑の情報箱甘み有り果肉厚い大果種パプリカ果肉薄い中果種ピーマン辛み成分を合成する遺伝子無し小果種シシトウ万願寺トウガラシ伏見甘長辛み成分を合成する遺伝子有り昨年は、食欲が減退するような異常な暑さが続きました。野菜はもとより、栽培管理をする生産者の意欲や健康に大きな影響を及ぼしました。こうした気象状況にならないよう、切に願うばかりです。日頃食べている野菜は、栄養価だけでなくさまざまな効能があるといわれています。その中の代表的な1つ、辛みがピリッと効き食欲を増進させる「トウガラシ」について紹介します。漢字で「唐辛子」と表記され、中国四川省の「火鍋」が有名なため、中国が原産のように思われがちですが、メキシコを中心とした中南米が原産地といわれています。14世紀末、大航海時代の幕を切り開いたコロンブスが西欧に伝え、その後広く世界に広がったといわれています。日本への伝来は諸説ありますが、16世紀中ごろまでには日本に定着し、現在では各地域に多くの「在来種」があります。「お伊勢参り」に代表される有名な神社や寺院のある地域では、現在も種子と加工品が作り続けられています。昔は参詣者同士がイネをはじめとした種苗を交換する場だったのではと思います。神奈川県内では、大山地域(伊勢原市)でもさまざまな野菜が作られていますが、残念ながら十分な研究がなされていません。トウガラシには5つの種類があり、日本で栽培されているのはほぼ全て「アニューム種」に含まれます。トウガラシの仲間には、ピーマンやパプリカが含まれ、辛みの有無と果実の大きさ等で次のように分類されます。ピーマンは収穫が遅れると、果実が橙〜赤く変色していきます。果実の糖度が高くなるので甘く、果皮がやや軟らかくなります。ぜひ食べ比べてみてください。一般的には、種子を取り除くと辛さが弱くなるといわれることがあります。最も辛みが強い部位は、種子がついている胎座・隔壁です。種子を取り除く時に、胎座部分も一緒に取れるため勘違いされているのだと思います。辛いトウガラシの横にシシトウやピーマンを栽培すると、果実が辛くなるかもしれないと心配される方がいますが、試験結果から辛くなることはありません。花粉親の性質(遺伝子)が、交配した個体の種子(正確には胚乳)や果実に現れることがあります(注:専門用語では「キセニア」「メタキセニア」といい、イネのモチ性やトウモロコシの子実の色などの事例が知られています)。トウガラシの仲間の場合、辛くなる遺伝子を持っていないピーマンなどが辛くなることは、遺伝的に起こり得ません。シシトウや甘長系統は、辛くなる遺伝子を持っていますが、受粉により辛くなることはありません。交雑した世代(当代果実)では形質に影響は出ないシシトウや甘長トウガラシを食べた時、辛い「大当たり」の原因は、辛み成分を合成する遺伝子を持っているためです。環境ストレスにより正常に受粉せず、単為結果することで辛くなるとする研究報告があります。ストレスを受け、生育が抑制された果実の形状は、いびつになりやすい傾向があります。トウガラシの形状は6角形が基本です。5角形のピーマンがおいしくないように、6角形以外の形状のトウガラシ、特に丸形は辛くなる傾向があると思われます。トウガラシの来歴トウガラシの種類「辛み」は食味の5要素には含まれませんが、食欲を増進させ、精神を高揚させる効果があります。辛み成分の1つ「カプサイシン」はトウガラシだけが持っています。辛い部位と要因トウガラシを知ろう

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