JA横浜_Agri横浜Vol.241
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店に向かって軽バンを走らせる。自宅からわずか5分。柳下さんの出荷時刻は毎日同じだ。開店は9時半なので、出荷者の姿はまだ少ない。特に一番乗りを意識しているわけではないが、朝イチには理由があるようだ。実家近くに住む長女いわく、「お客さんと会話するのが苦手なんですよ」。苦笑いを浮かべる柳下さんだが、直売所スタッフからの信頼は厚い。ネギ、ハクサイ、レモン、湘南ゴールドなどを出荷。畑はすべて生産緑地で、消費者ニーズの高い野菜を年間20〜まとまった規模で作付ける出荷者は数少ないが、その中でも存在感を放つ。松丸和義店長は「当店が誇る生き字引。我々から相談を持ち掛ける朝7時半、「ハマッ子」直売所本郷2月上旬の端境期でも、ダイコン、こともあり、いつも頼りにしている」と賛辞を贈る。生産はほぼ一人で担い、収穫と調整作業は実弟の協力を得る。土を動かすなど重いものを持つ作業は、さすがにこたえるという。育苗も視力が弱るとともにできなくなり、主力野菜は購入苗に切り換えた。しかし、長年のキャリアで培った経験と勘は最大の強み。やるべきことは分かっている。「農業は自然相手。毎年同じ作業を繰り返していても、同じ出来にはならない。だから日々勉強だよ」と、向上心は衰えを知らない。高校を卒業し、電気工事を手掛ける会社に就職した。渋谷まで1時間半かけて通勤。休日だけ父親と畑に出た。「親父は機械が苦手でね。だから私が耕運機に乗ったりしていた」と懐かしむ。会社では営業職だった栄区鍛冶ケ谷。地区内はすべて市街化区域に指定され、住宅に囲まれた貴重な担い手の一人。同区桂町のJA「ハマッ子」直売所本郷店に毎日出荷するなど、農業への熱意は年齢を感じさせない。鎌倉時代、この地に鍛冶師が住んでいたことが地名の由来といわれる直売所の知恵袋30品目栽培する。同支店管内では、50㌃の生産緑地で露地野菜を作る柳下昌章さんは、JA本郷支店管内の50代で本格就農栄区鍛冶ケ谷柳下 昌章さん(87)濱農浪漫元気の源は畑仕事市街地で農地を守る

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