売りは7品種の食べ比べ師の栽培スタイルを継承ランドマークとして存在感を放つ横浜薬科大学の図書館棟を見上げる平地に、川戸ファームの温室がある。園主の川戸浩二さんは、伯父の農地を引き継ぎ50歳でUターン就農。農業経験ゼロから始めたイチゴ栽培は土にこだわり、イチゴ狩りの予約が絶えないほど人気を呼ぶ。横浜市の南西部、境川を挟み藤沢市と隣接する戸塚区俣野町。地域の たんり。整然と並ぶ栽培ベッドごとに異なる品種が植えられている。紅ほっぺ・おいCベリー・かなこまち・さがほのか・ベリーホップすず・章姫・白蜜香。川戸ファームのイチゴ狩りは、7品種の食べ比べを楽しめることが売りだ。今季はこれまでで最多を用意した。「かなこまち」は神奈川県のオリジナル品種で、糖度が10〜12度と高く、酸味とのバランスが良いのが特徴。県いちご組合連合会の会員しか栽培できないため、市内での生産農家は数軒という希少な品種である。ほどの高さに栽培ベッドを設置した高設栽培で、立ったまま作業ができる。培地はヤシガラやピートモスなどが一般的だが、川戸さんはイチゴ専温室内をふんわりと包む甘い香毎年、1〜2品種を入れ替えるが、温室は2棟12㌃。地面から1・2㍍用の培養土に、堆肥と有機質肥料を独自にブレンド。手作業で栽培槽の中の土と混ぜ合わせるのは重労働だが、この努力が川戸ファームのイチゴの味を生み出している。株数は5500本で、子苗は完全自家栽培。「育苗は毎年勝負。同じ品種でも毎回同じようにはいかない」と、川戸さんの表情が引き締まるのには理由がある。令和3年に温室を増設した際、多くの苗を必要としたが、雨天が1カ月近く続いた影響で炭疽病が発生。半分近くを廃棄し、購入苗で補ったものの、今度はうどん粉病にやられるという苦い経験があるからだ。今季の苗は昨年の猛暑を乗り切り、「一番良くできた」と安どの表情を見せる。大学は機械科。工作機械メーカーでコンサルティングなどを担当し、全国の営業所を飛び回った。職位が上そおいしさ生み出す土づくり予約システムで負担減へ戸塚区俣野町川戸 浩二さん(60)濱農浪漫
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