JA横浜 Agri横浜Vol.239
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技術顧問 福井 英治*1㎛=0.001㎜ウイルス(0.3㎛以下)土や緑とふれあう暮らし緑の情報箱市民の森のスギとヒノキの混交林ほうき さわ11月下旬のスギの雄しべ㊤と雌しべ(褐色の球形)花粉の放出前㊧と放出後スギ花粉の大きさは30㎛(マイクロメートル)髪の毛(90㎛)花粉スギは「すぐなる木」「真っすぐに伸びる木」から名付けられた日本の特産種です。ヒノキと並んで多く栽培されており、林業上ではとても重要な種類です。建築材、家具材をはじめ、葉から樹皮まで利用され日本人の文化と生活に深く関わってきました。しかし、近年の評判は…?スギの特徴ヒノキ科スギ属の常緑針葉樹で、以前はスギ科として独立していました。日本に自生している樹木の中では最も長寿の部類で、屋久島のスギは2000年以上ともいわれています。このため天然記念物に指定されているものも多数あります。花粉症日本各地には「秋田スギ」や「吉野スギ」など有名なスギ林がありますが、降水量の多い所にたくさん生育しているのが特徴です。巨木や古木が多く、神奈川県内で最大のものは山北町箒沢にある「箒杉」で、樹高45m、胸高周囲は12m、推定樹齢2000年とされています。スギは横浜市内の市民の森でもよく見られます。近年、スギ花粉症のニュースは毎年恒例となっています。日本人の約30%が花粉症というデータもあり、2月に入ると新聞やテレビでも花粉情報が出るほどで、今や天気予報よりも重要な情報です。スギは雌雄同株(雄しべと雌しべが同じ株)で、早春に小枝の先に小さな雌花と雄花をつけ10〜11月に成熟します。この雄花の数はかなり多く、明るい茶色で固まっているので遠くからでもよく分かります。スギは風媒花なので風で多くの花粉が飛ばされます。スギがこれだけ注目されるのは花粉量が半端なく膨大なためです。待ち遠しいサクラ前線情報と異なり、スギは目の敵にされています。これだけスギ花粉が増えた原因は、戦後の国土回復のために大量に植え付けられた苗木が花をつける樹齢となり、一斉に花粉を放出し始めたためといわれています。生物はできるだけ多くの子孫を残すため幼年期から体を大きくすることに力を入れ、ある程度大きくなったら繁殖に力を入れます。スギは長寿なため、幼年期を終えた老木が花粉を飛ばしまくっているわけです。スギの花芽は自然条件下では開花の前年の6月下旬〜9月中旬にでき、12月ごろまでに花粉を作ります。このため、特に7月上旬〜8月中旬の気温が平年より高く日照時間も長いと花芽の形成が促進されます。雨が少なく真夏日や熱帯夜の多い年の翌年は、花粉の飛散量が多いということです。日本特産の樹木 スギは嫌われ者?

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