食料安全保障の確立を基本理念の中心に位置付ける「」4 するための関連法も制定されました。❺「地域社会の維持」を柱とする 農村の振興人口が減少し、集落の存続や農業インフラの保全が困難な現状を考慮し、農業従事者以外の人々とも協力して行う農地保全に向けた活動の促進、中山間地などの地域社会の維持に向けた支援などが明記されました。改正基本法の下で、農業従事者・食品産業事業者は、持続可能性に配慮しながら、より収益性の高い経営の実現を目指すとともに、消費者は食料の選択や持続的な食料供給について理解を深めるなど、食料システムに関わる全ての人が、これまでの経験にとらわれず、新たな情勢に対応した取り組みを行っていくことが求められています。令和6年5月に成立した改正基本法のポイントは次の五つです。❶国民一人一人の食料安全保障の確立改正基本法は、「国民一人一人の食料安全保障」を基本理念の中心に位置付けました。食料安全保障とは「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、国民一人一人が入手できる状態」のこと。国際紛争や異常気象で国内が食料不足になった場合には供給の確保を図ることが明記されました。これを受けて、平時からの対応を定めた関連法(食料供給困難事態対策法など)も成立しました。食料安全保障の土台となる農業生産を増大させるためには、海外への輸出を促進し、生産コストや人件費、環境保全型農業に取り組む上で必要なコストなどを反映しにくい実態を踏まえて、農業従事者や食品産業事業者、消費者などが「合理的な価格」を考慮しなければならないという考え方が示されました。これらを受けて、令和7年には適正な価格転嫁を促すための法律が制定される予定です。❹スマート農業で 農業の持続的な発展を促進担い手不足や高齢化という今日の農業の課題を解決する方法として期待されているのが「スマート農業」です。人工知能(AI)やドローンなどを活用することで、少人数での栽培・収穫が可能になるといわれています。改正基本法では「先端的な技術(スマート農業)」を農業の持続的な発展にとって必要な施策として取り上げ、6年6月にスマート農業技術の活用を推進国内農業を発展させることが重要という考えも示されました。❷環境と調和のとれた 食料システムの確立食料安全保障と共に基本理念の一つに位置付けられたのが「環境との調和」です。「食料システム」とは、食料を生産・加工し、消費者に届けるためのネットワークのこと。この各段階における温室効果ガスの排出など、環境に与える負の影響に着目し、負荷低減への対応も必要とされています。❸価格転嫁など 合理的な価格形成の実現農産物の小売価格に資材・燃料などの今回の改正のポイントは?▼JAはスマート農業の技術向上や周知を目的にドローンの実演会を実施日本の農業の最も大きな課題といわれるのが担い手不足と高齢化。統計によると基幹的農業従事者数は、平成12年から20年間で約240万人から136万人に減少し、7割近くが70代以上。この比率は今後も上昇するとみられています。▲横浜市が行う自律走行搬送ロボット(AMR)の実証実験に協力。JAが農業経営事業で使用する園地を実験場所として提供した平成222426令和12年度2830令和2基幹的農業従事者の年齢構成(令和5年)出典:日本農業新聞食料自給率の推移 農林水産省資料を基に作成
元のページ ../index.html#4