Agri横浜 vol.219
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通い始めて2年になる木村さん。たすくの黒田さんは、「技術を習得し、自信がついたようだ」と評価する うよ  青葉区鉄町にある温室の中から聞こえてくるにぎやかな声。ここでミニトマトを生産するユニバーサルアグリカルチャーサポート合同会社は、障がい者を受け入れ、共に作業する農福連携に取り組んでいます。代表の金子栄治さんは、紆余曲折の末に福祉と巡り合い、現在の営農にたどり着きました。人工知能(AI)による自動かん水システムの導入で省力化を図り、農業の働き方改革を実現するなど、農業経営者として手腕を発揮します。金子さんは平成30年に同社を設立。11㌃の温室6棟で養液土耕栽培に取り組みます。自動かん水システムが、最適なかん水と施肥のタイミングを判断し、全自動で供給。年間約6㌧を生産し、近郊の市場やスーパーに出荷する他、自社の直売所で販売します。市内の社会福祉法人「同愛会」から知的障がい者5人を週5日、施設外就労として受け入れます。温室内の除草や掃除、パッキングやシール貼りなどの作業を、適性に応じて割り当てます。発達障がい者の支援事業を行う都内の「たすくグループ」から週2日通う生徒には、収穫青葉区美しが丘/金子栄治さん福祉とAIで農業に革新をを任せます。収穫の目安が一目でわかるよう、果実の色づき具合を14段階で示した色チャートを活用します。また、金子さんが監修し、たすくが作成した「ミニトマト栽培のライセンス」を導入。障がい者が現在どのような作業ができるのか、作業の工程ごとに2級から2段まで分類し、「見える化」しました。ライセンスは3カ月ごとに見直し、適正な賃金の基準として応用しています。農作業では連係プレーが光ります。栽培用の支柱を埋め込むために、土に印を付けるのは金子さん、埋め込むのは障がい者、最後にハンマーで打ち込むのは同愛会の支援員といった具合。農福連携をスムーズに進めるコツは仕事の細分化にあり、農業は分業できるのが強みだといいます。とはいえ、思い通りに仕事が進まないのは日常茶飯事。一進一退を繰り返す障がい者も多いそうですが、常に相手に寄り添い、我慢強く成長を見守ります。「農福連携はメリットばかり。助けてもらっているという気持ちを忘れず、仲間としてわかり合いたい」と話します。農福連携金子さん㊥が受け入れる「たすくグループ」の生徒木村さん㊧と、同スタッフ黒田さん。農福連携が多くの農家に広がることを金子さんは願う特集特集 農福連携とは、障がいのある人たちが農作業などに従事し活躍することを通じて、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組みです。担い手不足や高齢化が進む農業分野において、新たな働き手の確保につながる可能性もあります。今回は、市内での農福連携の事例を特集します。活躍の場の提供から生まれる新たな可能性

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